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PIANO KONZERT ZUR EINWEIHUNG DES
CLARA-SCHUMANN-FLUGELS AUF SCHLOSS BRANITZ
Jenny Zaharieva-Maleeva (Pf)
レーベル;Musical Heritage Society 入手性;海外現行盤(?)
CD番号;MHS CD 5158841 お気に入り度;★★★★★
録音年月日;1997年5月30日 録音;DDD 資料的貴重度;★★★★★
収録時間;63分19秒 音質    ;★★★★


収録曲
  1. ショパン;ワルツ第二番「華麗なる円舞曲」
  2. ショパン;ワルツ第六番「小犬」
  3. ショパン;マズルカ第14番
  4. ショパン;マズルカ第15番
  5. ショパン;マズルカ第16番
  6. ショパン;マズルカ第17番
  7. クララ・シューマン;スケルッツォ作品10
  8. クララ・シューマン;ロマンス作品21から第一曲と第三曲
  9. シューベルト;ピアノソナタ第5番


コメント

これは大変貴重なCDです。

このCDは2000年11月22日(水)に横浜のフェリスホールで開催された公演会

〜ピアノ公開レッスンと公演「根幹からの演奏を」クララ・シューマンをめぐって〜
講師:ジェニ・ザハリエヴァ(ピアニスト・大学教授)
で配賦されたCDです。この公演会に私は参加できなかったのですが、参加された方からCDを譲っていただくことが出来ました。ライナーノーツはドイツ語で書かれていますが、幸い英文の資料も同時に配布されました。私自身のCDの感想を書く前に、まずはその英文資料の全文和訳をご覧下さい。
(注;CD解説書でピアニストの名前はZaharievaですが、英文解説書ではZacharievaという表記になっています。修正無しで記載します)
 
エキサイティングな音楽の発見をすることはMHSメンバーの日課の一部ですが、本日の発見は二重の喜びに満ちています。恐らくあなたが名前を聞いたことも無いような、それでいて世界一級のピアニストが、あなたがやはり聴いたことも無いような歴史的なピアノを弾きます。Jenny Zacharieva-Maleevaがかつてクララ・シューマンに所有されていたとても優雅な1832年製のピアノを演奏するのです。

Jenny Zacharieva-Maleeva:ブルガリアの秘宝
Jenny Zacharieva-Maleevaはソフィアで生まれ、厳しいことで知られるモスクワ音楽学院を卒業、現在はソフィア.ミュージック・アカデミーの教授をされています。偏見をまず捨ててください。彼女はバルカン半島の片田舎で地道な活動をする類の人ではありません。彼女の演奏は全欧、アフリカそして極東で喝采を浴びてきています。残念ながらこれまでアメリカでの活動は殆どありませんし(注;この資料はアメリカ国内向けに記述されています)、彼女のこれまでのCDは見つけることすら難しいようなマイナーなレーベルからしか発売されていませんので、あなたが彼女の名前を知らないとしても無理も無いのです。
彼女のドビュッシーのプレリュードの録音がラジオ放送で流れたのを聴いたことがあるという幸運な方もいらっしゃるかも知れません。それが1988年に放送されたとき、ピアノ愛好者の間に小さな興奮を巻き起こしました。もしこの演奏を聴いたことがあるなら、あなたは既にZacharieva-Maleevaが色彩感覚に優れた、創造力に溢れたピアニストである事を御存知でしょう。
彼女は一般的ではない音楽とか楽器にも大きな興味を持っています。例えば彼女はLalo Schifrinのアメリカのコンチェルトの欧州初演を成し遂げています。Lalo Schifrinは「スパイ大作戦」の主題曲の作曲家として知られ、その曲はもともと欧州でのアメリカ発見500年祭を祝うために書かれました。
Zacharieva-Maleevaはまたジョージ・ガーシュインへの記念として特別に作られたスタインウェイ「Rhapsody in Blue」による演奏会を最初に開催したピアニストでもあります。

彼女がこの録音の中で弾いているピアノは、しかし対称的に全くもって新しいものではなく、壊れやすい骨董品です。

クララ・シューマンのBreitkopf & Haertel製コンサートグランドピアノ
1994年にドイツにある宮殿と公園、Schuloss Branitzを訪れた際に、Breitkopf & Haertel社のライプツィッヒ工房によって作られた1832年製の古くてがたがたになったピアノに巡り会いました。彼女はそのピアノが、19世紀最高のピアニストであり、ローベルト・シューマンの妻であり、また彼女自身も作曲家であったクララ・シューマンにかつて所有されていたことを知り興味を惹かれました。その当時このピアノはメンデルスゾーンやリストの様な人物によっても演奏されていたのです。しかしZacharieva-Maleevaは楽器の保存状態のひどさに落胆し、このピアノの修復活動の先鋒に立つことになりました。
幾つかの商業的なスポンサー協力と慈善コンサートによる収益によって、修復作業は1995年にGoecke-Fahrenholtzのベルリン工房で着手されました。そしてクララ・シューマンのピアノの修復は完成し、1997年5月30日にSchuloss BranitzでのZacharieva-Maleevaによる特別演奏会に供されたのです。このピアノが演奏されるのは少なくとも数十年ぶりであり、この演奏会の後もまた演奏されていません。この楽器はとてもデリケートでコンサートに耐えられるまでに仕上げるには大変な労力がかかりました。

その音の歴史
Zacharieva-Maleevaが最初に楽器を弾いたときに、現代のコンサートグランドピアノに比べてその音がとても「こもっている」事に彼女はあっけにとられました。でも思い出してください。このピアノが最初の音を奏でた時の僅か5年前にはベートーベンもシューベルトもまだ生きていました。反響する低音も華々しく鋭い高音もまだピアノには実現されていませんでした。それは後のリストの貢献によって実現されています。
クララ・シューマンのピアノはその同時代のピアノと同様に、抑えられた(muted)鼻にかかるような音質を持っています。全ての音域は同等のクリアネスを持っていますが、しかしどれも鳴り響くような事はありません。
これはシューベルト、ショパン、そして若きクララ・シューマンがその耳で聴いた音なのです。そして、それに相応しいようにZacharieva-Maleevaはこれらの作曲家の作品を演奏会の曲目として選択し、このCDに収録しています。シューベルトの作品143のソナタ、ショパンの二つのワルツと四つのマズルカ、クララ・シューマンのスケルッツォと二つのロマンスです。この曲目は偶然ではなく、1884年のロシア旅行でクララ・シューマン自身が演奏した曲目そのものなのです。

このMHSのCDは本物の19世紀のピアノ演奏会を21世紀の家庭の快適さの中で聴くことの出来る類まれな存在です。お聴き逃しの無いように!

MUSICAL HERITAGE REVIEW VOL.24, NO.12, 2000  RELEASE 623
(写真は全てCD解説書から転載しました)

このCDの聴き所はやはりピアノの音色です。解説にあるように現代ピアノとは全く違う、さりとていわゆるフォルテピアノでもチェンバロでもない不思議な音色、すこしこもり気味で残響の殆ど無いとても素朴な音です。これが若きクララの聴いていた音そのものだとしたら(そう解説書には書いてありますね)現代ピアノの演奏に一喜一憂している自分が滑稽に思えてくるほど感動的な音色なのです。このピアノの作られた1832年と言えば、クララとローベルトの愛が美しく開花したまさにその年です。私が溺愛しているクララの作品3は1830年に着手され1833年に完成しています。そのクララが作品3を作るときに弾いたピアノがこの様な音色を持っていたのだ!(あるいはこのピアノ自身を弾いていたのか?)と思うと、このピアノの音色のひとつひとつに耳をそばだてて聞き入ってしまいます。更にこのCDの収録曲目が1884年のクララの演奏会と同一となれば、余計に耳をそばだてて私はステージのクララのもとへタイムトリップしてしまいそうです。

このピアノに強奏や目まぐるしく指を動かすような速い演奏は似合いません。ザハリエヴァ女史の演奏も従って落ち着きのある、淑やかな演奏で、聴き慣れたはずのショパンやシューベルトの曲が違った姿を現してくれています。クララの曲もまた同様。現代ピアノによる演奏から比べると何としっとりして素朴な演奏なんでしょう。しかしさすがはクララの曲です。華々しい高音や豊かに響く残響音が無くとも、クララ独特の可憐なまでの美しさと深い憂愁を湛えた音楽はそこに厳然として存在しています。

このCDの入手方法はわかりません。非常にマイナーなレーベルで、まだAmazon.comとかCD Nowのカタログに掲載されていません。しかし廃盤ではなくどちらかと言えば発売したての新譜の様ですので、根気強く国内外のCD情報をチェックしてみてください。きっと購入することが出来るでしょう。ちなみに英文資料によれば米国での価格は16.99ドルですので、フルプライスのCDの様です。
このCD本体、ジャケットにはCD番号やレーベルの記載が全くありません。唯一 LAUBAK (LAUSITZER BRAUNKOHLE AKTIENGESELLSCHAFT) という表記がありますが、これはCDを製造した会社名だと思われます。その他には録音技師、編集者、プロデューサーの名前が記されているのみです。恐らくは一般販売を目的としない自費製作のCDなのだと思われます。一方で上記に記載しているレーベル及びCD番号は英文資料に基づく物で、これは米国でのCD販売業者の番号と思われます。ちょうど東京エムプラスが輸入盤に対して解説書を付けて別番号で国内盤扱いで販売する場合の「国内番号」の様な物でしょう。ご参考まで。

(2000.12.29)

2001年9月現在、残念ながら如何なるインターネットCDショップでもこのCDを発見できていません。

Modified in September 2001


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