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※曲目のデータなどは、ナンシー・B・ライク著「クララ・シューマン、女の愛と芸術の生涯・高野茂 訳」
 をベースに作成し、手持ちの文献、CDの解説などを参考にして補填しました。

四つのポロネーズ 作品1
Quatre Polonoises pour le Pianoforte
(ピアノの為の四つのポロネーズ〜初版の表題に記されたタイトル)
  1. 第一曲;Polonoise in E-flat major
  2. 第二曲;Polonoise in C major
  3. 第三曲;Polonoise in D major
  4. 第四曲;Polonoise in C major


作品番号1を持つ四つのポロネーズは、クララが11才の1831年2月に出版されました。曲が作曲された年代については、Jozef de Beenhouwer盤の解説書は1828年以後、Nancy B Reichの2001年改訂版のClara Schumannでは1829年以後となっています。この曲の事が最初に現れる文献はクララの日記で、「1829年10月4日。朝10時30分にパガニーニに会いに行きました。私は古ぼけた黒い鍵盤のピアノで自作のE flatのポロネーズを弾かされました。しかし彼は大変気に入ってくれて、私には音楽の天分があり、音楽のフィーリングを持っている、と父に告げました。そして練習のおりにいつでも聴きにくる許しを頂くことが出来ました。」と書かれています。ですから、第一曲は少なくとも1829年10月以前に作曲されています。また別の日記には「1830年9月2-4日。父が外出している間に、私は変奏曲とポロネーズを一つ作曲した。」とありますので、4曲揃うのは1830年になってからの事です。

出版はライプツィッヒのホフマイスター社から1831年2月4日に200部が発行されています。最初のコピーは既にヴィーク家に同居していたローベルトにも手渡されました。

この曲に対する批評記事はいくつか出ていて、1831年6月17日付けのベルリンの「イーリス」の記事では、ある程度曲を褒めてはいるものの、基本的には「この様な曲は出版されるべきでは無かった」と否定的なコメントになっています。それは娘の売り込みを急ぐがあまりに煮え切らない曲を出版に踏み切った父、フリードリッヒ・ヴィークへの告発とも言えます。

初演の記録は残っていませんが、イーリスの批評の前には初演が有ったのではないかと思われます。また1831年末のパリに向かう旅行の途上で演奏されたようです。ヴィークが妻に宛てた手紙の中で「1831年11月14日。クララの4つのポロネーズはここカッセルで演奏され正統な評価を得るだろう」と書いています。
 

第一曲、変ホ長調のポロネーズ は、いかにも子供の習作という感じの、ちょっと不器用なメロディの主題が提示されて展開されてゆきます。9才の子供の作品としては立派ではありますが、やはり「年齢の注釈」無しには評価し難い曲でしょう。

第二曲、ハ長調のポロネーズ は、第一曲に比べると一気にあか抜けした曲に変わります。メロディの流れもスムーズで、音楽の輝きと成長が随所に見られます。

第三曲、ニ長調のポロネーズ は第二曲の移調変形版という感じの曲です。しかし、作品2や作品3につながる若きクララの溌剌とした右手の奏でる音楽の輝きと、単調に移調した時には少女とは思えないデリカシーに満ちた響きを聴くことが出来ます。

第四曲、ハ長調のポロネーズ はそれまでの曲に比べると、芳醇さを増した和音の響きに魅せられます。曲の展開の振幅も大きくなり、中間部では作品5に通じるようなちょっと妖しげな独特なメロディを聴くことが出来ます。

1994年初夏に初めてこの曲を聴いたときから現在まで、私のこの曲に対する印象は一貫しています。それは作曲を初めたばかりの幼きクララが如何に早く作曲家としても成長していったかが手に取る様に分かる「音で聴く伝記」というものです。第一曲は何度聴いても子供の習作以上の評価は与えられません。(ただこの曲を初めて聴いたとき、私の娘も丁度9歳で、目の前にいる我が子がこの様な曲を作曲したらブッたまげるだろうな、と父親ながらに思っていました。)そして第一曲のすぐ後に作曲された第二曲以後を聴き進むにつれて、その短期間での成長、成熟ぶりには耳を疑います。更に作品2、作品3と聴き進めば、若きクララが如何に早熟の天才であったかが分かるのです。父、ヴィークや、兄代わりのローベルトが如何にこの若き天才少女に狂喜乱舞したか、この曲から想像するのに難くはありません。
 
 

第一曲冒頭譜例
クララ・シューマン ピアノ曲集、森潤子校訂、音楽之友社1988 より


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