Robert Schumann : Anton Lesser
Clara Schumann : Anna Farnworth
Johannes Brahms : Vaughan Sivell
Produce & Cello : Steven Isserlis
Conductor : Christoph Eschenbach
Deutsche Kammerphilharmonie
Directer : Steve Guggi
A Rhombus Media Production
in association with
Channel 4 Television UK
NPS-Television
BMG Classics
1996年イギリス
1997年6月20日 及び 2001年11月30日
NHK BS2にて放映 50分
これはチェリストのスティーブン・イッサーリスがプロデュースした番組です。この番組には3つのパートがあり、それらが同時三次元的に進行します。
第一のパートはシューマン夫妻ゆかりの地を巡る旅です。シューマンが晩年作曲し、クララによって破棄されたという「チェロとピアノの為のロマンス」、その破棄された理由を追ってイッサーリスがドイツのシューマン夫妻ゆかりの地を訪ねて歩きます。ボンにあるシューマン夫妻の墓、エンデニッヒの精神病院(現在はシューマンハウスになっています)、そしてシューマンが最後に暮らしたデュッセルドルフ。
ボンのお墓では1996年5月20日のクララ没後100年を記念したセレモニーの情景とクララ研究の第一人者の「ナンシー・B・ライク女史」のインタビューがあります。エンデニッヒのシューマンハウスでは様々なシューマン夫妻の遺品と、シューマン研究家のインタビューなどが映し出されます。デュッセルドルフではシューマン夫妻が最後に住んだ家。
第二のパートではシューマンの音楽の本質を掘り下げる議論が展開されます。イッサーリスと指揮者のエッシェンバッハがシューマンのチェロ協奏曲のの音合わせをしながらシューマンの音楽を語って行きます。精神異常の為に晩年の作品には奇妙な所が有るとか完成度が低いとか言う世評を真っ向から斬ってゆき、シューマン晩年の曲風は意図的に天才的に作られた物だという事をピアノとチェロで演奏しながら証明をしてゆきます。そのシーンはそのままチェロ協奏曲の演奏シーンにスイッチして、この番組全体にシューマンのチェロ協奏曲がふりそそがれています。(エッシェンバッハとイッサーリスはチェロ協奏曲のCDを発売しています)。ヴァイオリニストのジョシュア・ベルも加わりヴァイオリン協奏曲の天才性なども語られて行きます。
第三のパートはシューマン夫妻の物語です。二人が恋に落ち、結婚し、若きブラームスが現れなごやかなひとときを過ごし、そしてローベルトが自殺を図り、精神病院に入院する。その間の物語が二人にとても良く似た俳優によって演じられて行きます(英語を話すのが残念ですが)。
これら三つのパートが交互に現われ、シューマン夫妻の人生の本質を多面的に語ってゆっく50分の番組です。
番組の最後は第一パートの旅を終えたイッサーリスが喫茶店でコーヒーを飲もうとしていると、第三パートのクララが突然現われイッサーリスと語り合います。イッサーリスが「なぜご主人のチェロとピアノの為のロマンスを破棄したのか?」と詰め寄ると、クララは当時そうせざるを得なかった心境を語り、最後に「手稿を破棄したことがそんなに愚かな事でしょうか?コピーの所在も確認せずに」「ロマンスは無事です。時が来ればきっと見つかりますよ」という謎めいた言葉を残して消えてしまいます。これで番組終了。
イッサーリスのシューマンへの思い入れが溢れんばかりに滲み出た素晴らしい番組です。最後の「ロマンスは無事です。時が来ればきっと見つかりますよ」という言葉にはもちろん根拠など有り得ません。しかしそれはイッサーリスの切なる願いであり、それを100マルク札のクララそっくりの女優を探し出してきて、そのクララに「見つかりますよ」と語らせる。なんと素晴らしいこだわり!これで世の中のシューマニアーナは全員きっと見つかると信じてしまいます。私は神様もまたシューマニアーナである事を祈り、ロマンスの発見を待ちたいと思います。
この番組は映像資料として極めて重要な物であり、是非再放送を期待したいところです(2001年11月30日再放映されました)。
イッサーリスとエッシェンバッハによるシューマンのチェロ協奏曲のCDはBMGから発売されています。
輸入盤:BMG 09026 68800 2
国内盤:BVCC-31002
また、英語版のビデオが下記で入手可能な様です。
http://www.bullfrogfilms.com/catalog/slr.html
(インターネットビデオショップのこのビデオの商品ページなので、リンク切れになるかも知れません) |