Clara Wieck Schumann : Katharine Hepburn
Robert Schumann : Paul Henreid
Johannes Brahms : Robert Walker
Franz Liszt : Henry Daniell
Friedlich Wieck : Leo G. Carroll
Produced and Directed by : Clarence Brown
SONG OF LOVE (C) 1947 Loew's Inc.
Renewed 1974 Metro-Goldwyn-Mayer Inc.
(c) 1988 MGM/UA HOME VIDEO ALL RIGHTS RESERVED
HERALD PONY CO. LTD
製造・発売元:株式会社ヘラルド・ポニー
販売元:株式会社 ポニーキャニオン
白黒(119分)Hi-Fi MONAURAL
ビデオ番号:V98F8772
この映画はシューマン夫妻の歴史を参考にして作られたフィクションです。ストーリー全体が史実を無視して脚色されていますので、シューマン夫妻の伝記を読んだことのある人には違和感(あるは大笑いしてしまうようないい加減さ)があります。またドイツの物語なのに登場人物は英語を話します。ですからこれを見る前には歴史的な知識は一旦ぜ〜んぶ忘れましょう。史実を無視しただけに映画のストーリーとしてはとても楽しめる内容になっており、また映画のストーリーの奥に有る本質においてシューマン夫妻の人生を正しく再現しているとも言えます。
「あらすじ」
1839年5月10日、クララが国王の御前演奏会でリストのピアノ協奏曲を弾くシーンから幕が開けます。そのアンコールに父ヴィークの「ラ・カンパネラ」の指示を無視してクララは愛するローベルトの「トロイメライ」を弾いてしまいます。父は突然の曲目変更は陛下に対して無礼だと怒るのですが、しかしコンサート後に楽屋に挨拶に来た王子は「最後の曲はとても素敵でした。最高に!」とクララに告げたのでした。
ローベルトはヴィークにクララとの結婚を申し込みますが断られ、裁判でヴィークと争います。裁判はリストの援護によって勝訴しクララとローベルトは結婚を成就しました。その日、新居で二人はローベルトからクララへのプレゼント「献呈」を共にピアノで演奏します。
やがて時は経ち、子供を沢山作り大家族となったシューマン夫妻のもとに若き青年ブラームスが訪れます。彼の音楽に感激した夫妻はすぐにブラームスを家族同然の扱いをし生活を共にします。ブラームスも沢山の子供たちの兄代わりとして奮闘し夫妻を助けます。コンサート旅行でも留守を預かるのはブラームスでした。しかしブラームスはクララを愛してしまい、やるせない気持ちに耐えきれずやがてシューマン家を去って行く運命にあります。
一方でローベルトは売れない作曲家という状況を打破する為にオペラの作曲に挑戦し、病気の兆候が現われ苦しむ中で完成させます。その頃、リストのサロン演奏会があり、リストは自分が編曲した「献呈」を尊敬するローベルトを賛えて演奏しますが、クララはその装飾と技巧に満ちた音楽に憤慨し、返礼としてクララの音楽観で、その音楽観をリストに諭すように語りながら「献呈」を演奏します。まわりはリストを侮辱するようなクララの行動にハラハラしますが、リストはそれでもシューマン夫妻を援護し、ゲヴァントハウスの有力指揮者のライネッケに「シューマン博士の新作を彼の指揮で聴いてみたい」と申し入れます。
リストのこの援護によりローベルトのオペラの初演が実現しますが、既に幻聴と幻覚症状の現われていたローベルトは演奏途中で指揮が出来なくなり初演は失敗。その後精神病院に入院してしまいます。夫の死の直前に見舞いに来たクララに、ローベルトは「新作が出来た!」と言って妻を喜ばせ、弾いて聴かせますが、その曲は「トロイメライ」でした。最初のフレーズを聴いてクララの歓喜は悲しみに変わりますが、それを悟られないように、新作を賛える様に夫に寄り添います。しかし...
ローベルトの死後、自暴自棄に陥ったクララをブラームスが再訪し、元気付けるべくクララを交響曲第一番の初演演奏会に誘います。クララは誘いを断りますが、結局演奏会に出かけます。クララを見つけたブラームスはクララを連れて演奏会を途中で抜け出し、町の屋外ダンス酒場でクララにプロポーズ。ブラームスの言葉に歓びと希望を見つけ出したクララに、酒場の楽団のヴァイオリニストが近づいて来て「シューマン夫人」を賛えてヴァイオリンで「献呈」(結婚の時に夫ローベルトからクララに贈られた曲)を演奏します。その曲を聴いてクララの顔は歓びに満ちた物から複雑な表情に変わり、ブラームスのプロポーズを断ります。
時が過ぎて1890年5月10日、クララは引退演奏会を皇帝の御前でします。そのアンコールは国王(1839年の御前演奏会でクララに挨拶に来た王子)に「陛下、お忘れだと思いますが...昔、夫の小品を陛下の御前で弾いたことがあります」との言葉と共に許しを得て「トロイメライ」を演奏し、物語の扉が閉じられます。
この様にこの物語の中では「トロイメライ」と「献呈」の二曲が重要な鍵になります。またリストが良き援護役として登場します。
これらのストーリーは必ずしも史実ではありません。リストが裁判で証言したという記録は有りません。ローベルトが完成したオペラとして演奏される曲はゲノフェーファではなく、ファウストからの情景の第三部です。ブラームスの一番の初演は1876年でなので、シューマンの死のすぐあとではなく20年後です。クララの引退も1890年ではありません。などなど、この映画ではむしろ史実に正しい部分を探す方が難しいのですが、それでもなおストーリーの本質においてシューマン夫妻の素晴らしさを描いていると思います。
この作品は2006年5月に価格500円程度の格安DVDとして再発売されています。主な書店などで入手可能です。 |