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LIEDER
Fanny Hensel - Clara Schumann
- Johanna Kinkel - Agathe Backer Grondahl
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Tuula Nienstedt (Alt), Uwe Wegner (Pf)
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レーベル;CHRISTPHORUS(ドイツ) |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;CHE 0068-2 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;1982年9月20日-9月26日 録音;ADD |
資料的貴重度;★★★★ |
収録時間; 44分34秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
ファニー・メンデルスゾーン;
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Die Fruhen Graber op.9-4
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Die Mainacht op.9-6
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Das Heimweh
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Italien
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Sehnsucht
クララ・シューマン;
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花よどうして泣くの Was weinst du, Blumlein・作品23-1
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美しさゆえに愛するのなら Liebst du um Schonheit・作品12-4
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彼らは愛し合っていた Sie liebten sich beide・作品13-2
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彼はやってきた Er ist gekommen in Sturm und Regen・作品12-2
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それはある日のこと Das ist ein Tag, der klingen mag・作品23-5
ヨハンナ・キンケル;
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An den Mond op.7-5
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Die Zigeuner op.7-6
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Die Lorelei op.7-4
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Die Geister haben's vemommen op.6-3
アガーテ・バッカー・グレンダール;
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Mandonnas Svaner
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Valborgsnat paa Havet
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Der skreg en Fugl
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Middelhavsnat
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Storm
コメント
歌手のTuula Nienstedtは名前から想像するとおりフィンランドの歌手で、現在はブラームスの故郷ハンブルグに住み活躍しているとのことです。彼女の声はとても澄んでいて、アルトとの記述がありますが仮にソプラノと言われても違和感がありません。全く無理なく高音が出てきます。本家ソプラノに時々見られる突き刺さる様な高音が無いせいでしょうか聴いていてとても心地の良い歌声です。内なる感情を込めながら、過剰な抑揚や装飾も無く静かに清楚にファニー、クララ、ヨハンナ=キンケル、そしてアガーテ=バッカー=グレンダールの歌を歌い上げて行きます。
このCDには彼女たちの曲から比較的ゆるやかなメロディを持つ物が多く選曲されています。その曲を静かに清楚に歌うので、ついつい心地よくなって眠ってしまいそうな...この解説を書くために一週間ほど通勤時に聴いていましたが、うとうとして何度駅を乗り過ごしそうになったか!...と書けばこのCDの性格を分かって頂けるでしょうか?
第一曲のファニーのDie Fruhen GraberからNienstedtの澄んだ歌声で頭の中は心地よいα波で満たされます。それはクララの曲でも続き、ヨハンナ=キンケルの曲でピークを迎えます。
ヨハンナ=キンケルはローベルトと同じ1810年にドイツ・ボンで生まれ、ローベルトの没から2年しか違わない1858年に亡くなっています。1836年にはフェリックス=メンデルスゾーンの勧めによりベルリンで音楽の教育を受けたとあります。これ以上の事は残念ながら解説書に記載が無く、手持ちの資料、他のCDにも現れない未知の女性作曲家です。
彼女の音楽はしかし、なんとまぁ優しいこと!ファニー、クララから連続して聴いても違和感のない、ドイツ(女性)ロマン派の流れの中にありながら、ファニーやクララには無いハッとするような響きがあります。それは日本の古い童謡のようでもあり、またジョージ=ウィンストンのピアノ曲にも現れるような日本人にとってハッとする哀愁の響きです。この響きはクララも曲を付けている有名なハイネの「ローレライ」でとりわけ聴かれます。ドラマティックなクララの曲に対して、キンケルの曲を聴くと優しい中に何とも言えない哀愁が漂って、しみじみとしてしまいます。この様な未知の作曲家との出会いもまた、クララのCD収集によりもたらされる喜びです。
アガーテ=バッカー=グレンダールはノルウェーはオスロ生まれの音楽家ですが、クララとは対照的な人生を歩んでいます。小さい頃から音楽が好きで、ピアノ演奏、作曲の両面で周囲から天才として讃えられたものの、本人や家族は音楽家として大成することを望まず、積極的なコンサート活動や作曲活動はしなかったのです。結婚前にハンス=フォン=ビューロやリストに賞賛されて彼らに師事し作曲を学び、結婚後は「家事のあとで」作曲をし、生涯に多数のピアノ独奏曲と歌曲を残しています。
息子がノルウェーを代表するピアニストに成長して演奏会で母の曲を取り上げ、また孫がノルウェーの楽譜出版社の社長になったこともあり、彼女の作品群は後生にキチンとした形で残されました。
彼女の音楽は、ファニーやクララ、ヨハンナ=キンケルとは一線を画すものです。シベリウスやグリーグの様に北欧特有の響きを持つ一方で、良くも悪くも「女性らしさ」を感じさせない骨太な音楽です。
アナログ録音ですが、音質は多少のヒスがあるものの上質な物です。むしろ下手なデジタルよりも声がまろやかになって良い録音と言えます。
このCDの欠点は、ひとりの作曲家の時間が短いことでしょう。4人で40分強ですから一人たったの10分です。ファニーもクララもあっと言う間に曲が終わってしまい、物足りなく感じてしまいます。とりわけヨハンナ=キンケルの曲はもっと沢山聴いてみたい物です。
2001年9月現在、このCDは廃盤アウトレットショップのバークシャーレコードにのみあります。実質廃盤です。
Modified in September 2001
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