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FRANZ LISZT Complete Song
Transcriptions of
Chopin, Mendelssohn, Robert
and Clara Schumann
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Joseph Banowetz (Pf)
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レーベル;NAXOS(香港) |
入手性;輸入現行盤 |
CD番号;8.553656 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;1995年10月25-26日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★★★ |
収録時間;71分58秒 |
音質 ;★★★ |
収録曲
リストのピアノ独奏編曲による
ショパン;17のポーランドの歌 作品74から
1 おとめの願い(作品74-1)
2 春(作品74-2)
3 指輪(作品74-14)
4 遊び(作品74-4)(リスト編曲では「バッカナール」と表記)
5 私のいとしい人(作品74-12)
6 花婿(作品74-15)(リスト編曲では「家路」と表記)
クララ・シューマン;
7 なぜ他の人に尋ねるのか?(作品12-11)
8 私はあなたの瞳に(作品13-5)
9 ひそやかな語らい(作品23-3)
ローベルト・シューマン;
10 春の訪れ(作品79-19)
11 牛飼いの別れ(作品79-22)
12 時は春(作品79-23)
13 クリスマスの歌(作品79-16)
14 ただ憧れを知る者だけが(作品98a-3)
15 さまよう鐘の音(作品79-17)
16 私は戸口に忍び寄り(作品98a-8)
17 日の光に寄す(作品36-4)&私の恋人は赤いバラの様だ(作品27-2)(合体編曲)
18 プロヴァンスの歌(作品139-4)
19 献呈(作品25-1、ファーストバージョン)
20 献呈(作品25-1、1848年コンサートバージョン〜有名な編曲の方です)
21 春の夜(作品39-12)
フェリックス・メンデルスゾーン;
22 日曜日の歌(作品34-5)
23 冬の歌(作品19a-3)(解説書は19a-4と誤記載)
24 歌の翼に(作品34-2)
25 ズライカ(作品34-4)
26-27 舟歌(作品50-4)&狩人の別れの歌(作品50-2)(合体編曲、別トラック収録)
28 新しい恋(作品19a-4)
29 旅の歌(作品34-6)
30 春の歌(作品47-3)
コメント
リスト編曲の歌曲は、ローベルト・シューマンのミルテの花作品25の第一曲「献呈」を初め数曲が有名ですが、このCDにはそれ以外の、他では聴くことの出来ないような珍曲も含めて、ショパン、クララ&ローベルト・シューマン、メンデルスゾーンの歌曲からピアノ独奏曲への全ての編曲が収録されています。ちなみにこれ以外にはシューベルトとベートーベンの歌曲からのピアノ独奏編曲もありますが、こちらも全曲発売されるのではないかと思われます(既にシューベルトは一枚分発売済みです)。
このCD収録曲の内で三省堂の「クラシック音楽作品名辞典(第13刷)」に掲載されているのはショパンの6曲、メンデルスゾーンの7曲(トラック26-27が未掲載)、ローベルトの「献呈」と「春の夜」だけです。それ以外のローベルトの10曲、そしてクララの3曲は私自身このCDで初めて知る曲たちです(このCDを知るまではリストによるクララの歌曲の編曲の存在を知りませんでした)。何故クラシック音楽作品名辞典の事を申し上げたかというと、この本に掲載されている曲と、そうでない曲(すなわちリストが積極的には世の中に出さなかったか、あるいはリストは出版した物の”リストファン”が大歓迎しなかったと思われる曲)には大きな違いがあるからです。それは私にとって嬉しい、新しい発見でもあります。
まず私にとっての最大の関心事、クララの3曲ですが、リストとは思えないほど実に素直な編曲で、クララの歌曲の持つ優しさ、美しさ、慎ましさがそのまま鍵盤の上から紡ぎ出されてきます。この様なクララの歌曲のピアノ独奏編曲を聴くのは実に心地よく、「リストよ何故3曲しか残さなかったのだ!」と追加注文をつけたくなります。これはトラック番号10から19のローベルトの曲(つまり三省堂の辞典に掲載されていない曲)にも引き継がれて、実に素直な編曲による聴き慣れたローベルトの歌曲が流れてきます。注意して聴けばこれらの曲にもリストならではの華麗な響きの片鱗が伺えますが、リスト嫌いの私の耳にもそれは決して嫌味には響かず、クリスタルなスパイスの隠し味といった感じなのです。ローベルトの歌曲のピアノ独奏編曲はクララの物もありますが、CDで聞く限りその編曲と比べても素直さで甲乙付け難いと言えます。これはクララ編曲版を演奏しているCord
Garbenが比較的ダイナミックに弾きこなしているのに対して、このリスト編曲を弾いているJoseph
Banowetzが繊細に弾きこなしている事にも助けられています。
リストによる素直な編曲の存在は私にとって嬉しい驚きですが、その秘密が献呈のファーストバージョンに隠されていると思います。恐らくは有名なコンサートバージョンを作る前段階で編曲されたと思われるファーストバージョンは、クララ編曲の献呈と比べても遜色無いほどに原曲に忠実で、素直なのです。史上屈指のピアノの名手のリストも、リストならではの超絶技巧、典雅華麗な編曲に至るには楽譜上での緻密な推敲が必要だったのでしょう。その前準備として原曲の歌曲を大きな味つけもせずピアノ独奏にしたてるステップがあったのだと思われます。このファーストバージョンを初め、クララの3曲、ローベルトのトラック10から19の曲たちはその推敲前の作品では無いかと思うのです。ファーストバージョンにも細部にリストならではのクリスタルな響きを感じる物の、ここに聴くことのできる原曲に忠実な献呈はとても素敵です。
そしてトラック20の、有名なコンサートバージョンの献呈です。2曲を連続して聴けるので、リストが何をどう変えたのかが手にとる様に分かります。一転して華麗な技巧、目映いばかりの光の中の響き、そこはもうリストワールド!有名な曲だけに特に解説は要らないですね!
トラック21の春の夜も三省堂の辞典に載っているだけに、存在は有名な曲ですから、そこにもリストワールド、超絶技巧による華麗な輝きの中の饗宴があります。
残るメンデルスゾーンの曲とショパンの曲ですが、やはり原曲に比べるとリストらしさを随所に感じさせる華麗な編曲になっています。ただJoseph
Banowetzの演奏が比較的繊細で大人しい為もあって、全体的にはリスト嫌いの私にもとても聴きやすい演奏になっています。
このCDはオススメです。この様な新しいリストの世界、クララとローベルトの歌曲編曲の世界が知ることが出来て、一枚1000円未満!NAXOSさん、あなたは偉い!
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