ホームに戻る 所有CDリストに戻る 手前のCD解説 次のCD解説
|
A Second Glance
A Parallel Portrait of Harriet
Beecher Stowe & Clara Schumann
|
Jill Clayburgh (as Clara Schumann), Harry
Clark (Vc), Sanda Schuldmann (Pf)
|
レーベル;Parallel Portraits(カナダ) |
入手性;海外現行盤(本文参照) |
CD番号;PP1003 |
お気に入り度;★★☆☆ |
録音年月日;2000年(詳細不明) 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★★ |
収録時間;70分00秒 |
音質 ;★★★ |
収録曲
-
クララ・シューマン;チェロとピアノによる・3つのロマンス作品22第一曲
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
ファニー・メンデルスゾーン;無言歌作品8
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
クララ・シューマン、チェロとピアノによる・3つのロマンス作品22第二曲
-
クララ・シューマン、チェロとピアノによる・3つのロマンス作品22第三曲
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
フレデリック・ショパン;チェロソナタ作品65からLargo
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
ローベルト・シューマン;幻想小曲集作品73から第一曲
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
ローベルト・シューマン;幻想小曲集作品73から第二曲
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
ローベルト・シューマン;幻想小曲集作品73から第三曲
-
ステファン・フォスター;金髪のジェニー(チェロとピアノによる、原曲は歌曲)
-
《クララ・シューマンの朗読》
-
エイミー・ビーチ;夢、作品15
コメント
これはこれはとても個性的なCDです。
まずこのCDの企画意図を説明しましょう。でないと、上記の収録曲リストを見ても理解できないでしょうから。このCDはParallel
Portraitsという合計4枚あるシリーズの三枚目です。このシリーズは歴史上の二人の芸術家にスポットライトをあてて、その二人の音楽と二人の関係を語る朗読から構成されています。シリーズの一枚目はフェリックス&ファニー・メンデルスゾーン姉妹、そして三枚目が「アンクル・トムの小屋」の作者であるストーウェ夫人とクララ・シューマンです。
このCDの内容はクララ、ローベルト、ファニーなどの音楽と、クララとストーウェ夫人の間の文通の「クララ」による朗読からなっています。この三枚目の状況設定はフィクションです。実際にクララとストーウェ夫人の間に面識があったという記録は無いようです。
このCDのプロデュースにあたったHarry Clarkは、1996年初頭にクララ没後100年を記念した音楽プログラムを企図していました。その頃にアメリカ・コネチカット州にあるストーウェ夫人の家を訪問し、ストーウェ夫人没後100年記念式典に参加し、この二人の女性、クララとストーウェ夫人に興味を持ったのです。このふたりはどちらも夫に先立たれ、その後男尊女卑の19世紀にそれぞれの世界の先導者として生きた女性だからです。そして二人は共に1896年に亡くなっています。
この二人の女性先駆者が、もし互いに面識があり、文通をしていたら?という状況設定で生まれたのがこのCDです。
このCDは1856年6月8日、ローベルトの最後の誕生日をロンドンで迎えたクララのため息から始まります。クララの短い言葉「ああ、ローベルト、あなたと最後のキスをしてから既に2年5ケ月が過ぎたわ・・・(英語です)」に続いて、クララの作品22がチェロとピアノによって奏でられます。ヴァイオリンとピアノの為の3つのロマンス作品22のチェロによる演奏はこのCDが世界初録音です。第一楽章が終わると、エンデニッヒからクララのもとに届けられたブラームスの手紙〜エンデニッヒのローベルトの状況を報告しています〜をクララが朗読します。そしてブラームスへの返事〜1853年9月末にブラームスがシューマン家を訪問したときの想い出を交えて〜をクララが語ります。その朗読が終わると、ストーウェ夫人からの手紙が届いていて、その内容の朗読になります。状況設定は、ロンドンに来ていたストーウェ夫人が昨日のクララのコンサートを聴いて感激し、クララに手紙を出したというものです。その本文の最後にある「これから文通していただけませんか?」というストーウェ夫人の言葉により、このCDの本幕が開かれます。
以後、音楽と朗読の繰り返しの中で、二人の女性の人生がそれぞれの言葉を借りる形で綴られて行きます。(内容そのものは全てフィクションなので、説明は割愛します)
ヴァイオリンとピアノによる3つのロマンス作品22をチェロとピアノによる演奏で聴いてみたい!、という個人的希望を2年ほど前、オーボエとピアノによる演奏(シェレンベルガー盤)を聴いた時から持っていました。それが現実となったわけですが...残念ながらこのCDの演奏はお世辞にも上手いとは言えません。楽器の音は安っぽく、演奏も「もう少し歌心をもって弾きなさい!」と言いたくなるほど表面的に楽譜を追いかけたものです。第三曲の中でピアノがスタッカートで弾くべきところも全てスラーで流してしまうなど、いい加減な演奏なのです。内容の好き嫌いではなく、客観的に下手な演奏という点では私の800枚のCDの中では屈指です。そこにあるのはクララ「もどき」であり、それは続くローベルトやショパンの曲でも同様です。
この下手な演奏にも関わらず、私はこのCDを結構楽しんで聴いています。その理由の一つは、このCDは英会話のヒアリングの練習になるということ(笑)です。もうひとつはチェロとピアノという独特のバランスの作品22が聴けるからです。ヴァイオリンの場合はヴァイオリンが女性役でピアノが男性役という音のバランスになりますが、チェロとピアノの場合はそれが逆転するために、ひとつひとつのフレーズの意味合いが異なって聞こえるのです。それゆえに「お気に入り度」は客観的には★★、個人的には★★★★にしました。
このCDを聴いて、スティーブン・イッサーリスのプロデュースした「シューマンの失われたロマンス」という番組を思い出しました(詳細はこちら)。これはクララによって破棄されたというシューマンの「チェロとピアノによるロマンス」を巡る番組ですが、シューマンのロマンスの楽譜が見つかるまでの間、イッサーリスには代りにクララのロマンス作品22をチェロとピアノで弾いて欲しいと思ったのです。チェロの一流の名手によるクララの作品22は、きっと素晴らしい響きをするだろうなぁと思えるからです。さしずめこの曲はクララによる「隠された」チェロとピアノによるロマンス、と言えるでしょう。
シューマンにとても思い入れのあるイッサーリス/エッシェンバッハによるシューマンのチェロ協奏曲の演奏は、私にとってこの曲のベスト盤です。だからこそイッサーリスに作品22を弾いて欲しいのです。
このCDは2001年8月現在Amazon.comで売られていますが、それ以外のショップには無いようです。レーベルも殆どプライベートレーベルに近く、再プレスされるとも思えませんので、Amazon.comで売りきれたら廃盤でしょう。欲しい方はAmazon.comで入手ください。
ホームに戻る 所有CDリストに戻る 手前のCD解説 次のCD解説
|