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Robert Schumann
Music for Piano Duo
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Duo d'Accord [Shoo-Yin Huang,
Seabstian Euler]
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レーベル;OEHMS CLASSICS |
入手性;輸入現行盤 |
CD番号;OC 577 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;2006年1月16-18日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★★★ |
収録時間;63分28秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
ローベルト・シューマン:
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東洋の絵・作品66
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アンダンテと変奏・作品46(ピアノデュオ版)
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ピアノ五重奏曲・作品44(クララ・シューマンによるピアノ4手編曲版)
コメント
クララによる、ローベルトのピアノ五重奏曲のピアノ4手編曲版を収録した世界初のCDです。併せて録音頻度の低いローベルトのピアノ4手/デュオの曲を二曲収録しています。
台湾人ピアニストのShao-Yin Huangと、ドイツ人ピアニストのSebastian Eulerは共にミュンヘンのAcademy
of Theater and Musicで学び、先生の勧めによって1999年にデュオを結成したとありますので、まだ若いピアニストですね。残念ながら幾つかのコンテスト優勝歴を除けば、これ以上の情報はライナーノートに書かれていませんでした。インターネットを検索したところ、この二人のサイトがあり、これによればShao-Yin
Huangは1996年からミュンヘン音楽大学の教授を、1998年からはオーストリーのインスブルック音楽学院でピアノクラスを持っているそうです。Sebastian
Eulerの方は2002年からオーストリーのフェルドキルヒ音楽学院で教授をしているそうです。この二人の演奏にこれ見よがしな演出は無く、細部まで粗を見せない丁寧な美音で音楽を紡いで行きます。
東洋の絵・作品66は録音頻度が低く、私が所有するCDはこれが5枚目です(内一枚はオーケストラ編曲版なので、実質4枚目)。アンダンテと変奏はホルン、二台のピアノ、2台のチェロ版の演奏頻度の方が高く、ピアノデュオ版の方は極めて珍しくて、私にとってこれが3枚目のCDです。この二曲の演奏は私好みのもので、強奏部分でも荒々しさが殆ど無く、テンポは早すぎず、一つの音符も蔑ろにされていません。最新録音ゆえに音がとてもクリアなので、時間が過ぎるのも忘れて聴き入る事が出来ます。
さて、世界初録音となるクララ編曲によるピアノ4手版のピアノ五重奏曲ですが、ここに何か一芸を期待すると裏切られるでしょう。クララにとって夫ローベルトの曲は大切なものであり、何かを付け加えたり削除したり、脚色したりするものではなく、ありのままに自ら楽しむ為に編曲しているからです。このスタイルは他のクララによるピアノ独奏編曲されたローベルトの歌曲でも見られたものです。
オリジナル編成のピアノ五重奏曲と、ピアノ4手のピアノ五重奏曲を交互に聴いてみましたが、そこに在ったのは演奏する楽器が違うだけの同じ曲でした。もちろんチェロやヴァイオリンとピアノの響きは異なり、ニュアンスも多少異なりますが、クララは出来るだけオリジナル編成の持つ音楽の響きを忠実に鍵盤上に再現しようとしています。Duo
d'Accordの二人の演奏もクララの意図を察してか、この曲の演奏に限ってはスタイルをかなり変えてきていて、抑揚が大きい、強奏時には少し音が割れるほどのダイナミックな演奏スタイルにしています。室内楽特有の、興が乗ってくるに従ってお互いに高揚して行く様がピアノデュオで再現されています。
ピアノ4手編曲といえば、ブラームスが自分の作品やローベルトの作品を中心に沢山残しており、NAXOSから続々とCDが発売されて既に16枚を数えています(2006年9月現在)。ブラームスが何故こんなにピアノ4手編曲を残したかと考えると、クララと二人で弾きたかったからではないかと想像しています。彼が自作の作品を生涯に渡りクララにまず見せた事は有名ですが、ピアノ編曲スコアがあればクララにとっても自分で試演出来るので理解しやすかったでしょう。それがもし4手編曲であればブラームスはクララと共に演奏する口実が出来る訳です。そのブラームスは1855年、ローベルトが精神病院に入院している時にローベルトのピアノ五重奏曲・作品44をピアノ4手に編曲していますが、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から「演奏が難し過ぎる」という事で出版を拒否されてしまいました。そこでクララが「演奏が難し過ぎない曲を」という事で自ら4手編曲し、何人かのピアニストに試演してもらって難し過ぎない事を確認して、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社にスコアを送付し、出版されています。作曲が1857年秋、出版が1858年3月、ローベルトが逝去した後の事です。何となくクララとブラームスの関係が見え隠れするピアノ4手編曲版です。
ローベルトの珍しいピアノ4手の曲を収め、演奏も比較的上質なので良いCDと言えましょう。
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