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Clara & Robert Schumann Piano Works
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Patrizio Mazzola (Pf)
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レーベル;pan classics |
入手性;廃盤 |
CD番号;510 091 |
お気に入り度;★★★★★ |
録音年月日;1995年11月 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;74分42秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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ローベルト・シューマン:ピアノソナタ第3番・作品14
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ローベルト・シューマン:三つのロマンス・作品28
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クララ・シューマン:三つのロマンス・作品11
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ローベルト・シューマン:クララ・ヴィークの主題による即興曲・作品5
コメント
ローベルトとクララの「三つのロマンス」を、ふたつの「クララ・ヴィーク」で挟んだ、対称形の選曲&配置をしているCDです。ピアノソナタ第3番・作品14は1835年に作曲され、その規模の大きさから「管弦楽の無い協奏曲」とも呼ばれる曲ですが、第3楽章が「クララ・ヴィークのアンダンティーノ」、またはホロヴィッツの演奏で一躍有名になった「クララ・ヴィークの主題による変奏曲」という名前で呼ばれています。最後に収録されている1833年に作曲された「クララ・ヴィークの主題による即興曲・作品5」は内容的に変奏曲で、実質同名の変奏曲でロマンスを挟んでいる形になっているのです。
ローベルトのロマンス・作品28とクララのロマンス・作品11は共に二人が結婚する前、クララの父フリードリッヒ・ヴィークと裁判で争っている頃の1839年に作曲されました。ローベルトのロマンスは当時二人の仲をつないでくれたハインリヒ二世ロイス=ケストリッツ伯に献呈され、クララのロマンスはローベルトに献呈されています。
演奏は私好みで高水準です。このCDの良いところは録音がクリアで、ピアニストの打鍵もクリアなところ。どんなに早いパッセージでもひとつひとつの音がきちんと耳に届いてきますし、どんなに沢山の音が重なる和音でも濁ったリせずに、ひとつひとつの音が聞き分けられるぐらいの分解能を持ちつつ、綺麗な和音を奏でています。またピアノの低音から高音に至る音色も魅力的で、重さと深みのある低音、クリアで透明感のある高音は音楽の幅を拡げているように思います。
更に右手の高音域のメロディや和音と、左手の低音域の伴奏の和音の音量差が適切で、両方をしっかり耳に届けてくれる所もこの演奏の良いところ。その結果、ローベルトが意図した右手と左手の和音の打鍵を僅かにずらしながらリズムの妙を表現するパートで、きちんとリズムの絡み合いが聞こえてとても楽しめました。他のピアニストだと右手優先でメロディばかりが聞こえて、左右の絡み合いによるリズムの妙が聞き取りにくいのです。
このCD全体にちりばめられている「クララのテーマ」である下降音型の演奏表現も上手く、心の奥底に落ちて行く様な感情を、骨太な低音と明瞭な打鍵による深淵なリズムで表現しています。
上記のような特徴によって演奏されるローベルトの2曲 〜ピアノソナタ第3番と三つのロマンス〜 は、私にとってどちらも最上級の出来栄えです。曲に推進力があり、リズムの妙、音の絡み合いから来るローベルトならではの感情の動きを存分に味わえる演奏になっています。
クララの三つのロマンス・作品11の第1曲は、一転してリズミカルさよりも、ゆるやかなテンポで重々しく音がつながって行く、深淵で哀愁に満ちた表現をしています。この曲では一番好きな演奏のクリスティーナ・オルティーズに近い表現で、クララの苦難に満ちた時代の心を余すところなく描いています。中間部の時折表れる一分の希望を託す様な明るいメロディも淑やかに演奏しています。第2曲もクララに相応しい表現で、リズムよりも横のつながり重視で、ひとつひとつの音符を丁寧なペダル使いで大切に演奏しています。ローベルトの曲とは明らかに表現意図も演奏スタイルも変えており、曲を深く理解しているなと感じさせます。
クララ・ヴィークの主題による即興曲・作品5は、1850年改訂版での演奏。冒頭のクララのテーマをクララらしく明るく、横のつながり重視の淑やかなメロディで演奏し、その後変奏が進むにつれてローベルトならではのリズミカルな表現で紡いで行きます。この曲も大好きなもので、今まで多数のCDで聴いていますが《→1998年時点の聴き比べ記事(n'Guinさんのサイト)》、私の基準ではトップレベルの出来栄えです。
Patrizio Mazzolaはイタリア、ジェノヴァ生まれの男性ピアニスト。ルーサン音楽院でヒューベルト・ハリーに学び、現在はルーサンとベルンの音楽大学で教育活動を行う一方で、ソリスト及びニュークーベリックトリオの一員として活躍しています。彼のサイトを見ると、これまでに4枚のピアノソロのCDを発売しています。また彼のサイトのドメインがchなので、現在はスイスを拠点に活動しているようです。
このCDは1996年に発売されたものの、マイナーレーベル故に入手が難しく、2008年12月になってやっと中古で入手しました。残念ながら既に廃盤で入手は難しいようです。
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