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Johannes Brahms, Clara Schumann, Robert Schumann
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Karen Kushner (Pf)
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レーベル;Palatine Records |
入手性;輸入現行盤 |
CD番号;PL 9-0503 |
お気に入り度;★★★ |
録音年月日;2003年9月15-17日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★ |
収録時間;78分28秒 |
音質 ;★★★ |
収録曲
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ヨハネス・ブラームス:ピアノソナタ第1番・作品1
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クララ・シューマン:ピアノソナタ・ト短調
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ローベルト・シューマン:クライスレリアーナ・作品16
コメント
カレン・クーシュナーは1980年にノースウェスタン大学、1982年にジュリアード音楽院を卒業し、アメリカを拠点に活動しているピアニスト。ニューヨークのタートルベイ音楽院とマネス音楽大学で教鞭をとった後、現在はカンザスシティにあるミッソーリ大学の音楽院で教えています。彼女はソリストだけではなく、ピアノデュオ、室内楽の活動もしており、アマゾンで検索するとCDを7〜8枚見つけることが出来ます。
彼女の演奏は、全体的にメリハリに欠けた物になっています。良く言えば「柔らかい表現」なのですが、連続する音符と音符が常に納豆の様につながっている印象で、小刻みにリズムを刻んだり、この音は止める筈だよなぁ、と思う所でスラーとか軽いフェルマータがあるかのように伸ばしていますので、彼女好みの演奏スタイルなのだと思います。録音の質もあってか、和音や連続する音符が分離せずに塊のように聞こえたりしますので、余計メリハリに欠けた印象を持ってしまいます。
ブラームスのピアノソナタ第一番は、このCDの中では一番聴き応えのある演奏で、曲そのものが鋭い打鍵を要求するためか、メリハリの無さはあまり目立ちません。だからこのCDを最初に聴き出した時の印象は結構良かったです。しかし細密に聴けば全ての音が流れるように演奏されてしまうので、この曲が本来持っている筈の陰影が薄らいでいるように思えます。
クララのピアノソナタに移ると、冒頭の序奏を殆どペダルを踏みっぱなしで演奏されるので、先ほど描いたメリハリの無さが一気に目立ち違和感を覚えました。テンポは標準的で情感を込めた打鍵はするのですが、曲全体を通じて過剰なペダルにより音を不必要に伸ばしつなげてしまうのは、繰り返し聴いても耳に馴染みませんでした。リズムの取り方も時折不自然な所があります。良い点を見つけるとすれば第2楽章で、これは元来が緩やかなテンポを持った長調の嫋やかな曲なので、クーシュナーの演奏でも違和感なく、嫋やかさが伝わってきます。第3楽章は本来テンポの早い快活な曲ですが、クーシュナーはテンポを落として柔らかく演奏します。今までに聴いたことのないスタイルのスケルツォで、これはこれで楽しく聞こえましたが、曲本来の姿とは言い難いと思います。
ブラームスのピアノソナタ第一番、クララの唯一のピアノソナタと来れば、ローベルトからもピアノソナタ第一番が選ばれそうですが、何故か全く性格の異るクライスレリアーナが取り上げられています。このCDの中で一番苦しい演奏がクライスレリアーナの第一曲で、冒頭の激しく動き回る音符が分離せずに響き、テクニックが不足しているのかリズムも細部でぎこちなさが残り、あたかも息苦しいかのような雰囲気になっています。ローベルトの曲は複雑に絡み合うリズムをどう的確に表現するかが一つの要だと思っていますが、例によって音と音を繋げてしまう傾向が強いために、小刻みに変化する筈のリズムが一様に聞こえてしまいますので、BGM的に聴くなら良いのですが、音楽と真正面から対峙してしまうと欲求不満になります。
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