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Chants de l'aube
AUTOUR DE ROBERT SCHUMANN
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Sylviane Deferne (Pf)
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レーベル;CBC Records |
入手性;廃盤 |
CD番号;MVCD1078 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;1994年6月13-15日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★ |
収録時間;76分04秒 |
音質 ;★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン:三つのプレリュードとフーガ・作品16
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ヨハネス・ブラームス:ローベルト・シューマンの主題による変奏曲・作品9
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ルートヴィッヒ・シュンケ:グランドソナタ・ト短調・作品3
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ローベルト・シューマン:トッカータ・作品7
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ローベルト・シューマン:暁の歌・作品133
コメント
CDのサブタイトルに "AUTOUR DE ROBERT SCHUMANN"(ローベルト・シューマンの周り)と題されているように、ローベルト自身とローベルトに関係の深い曲が選ばれています。
まずクララの「三つのプレリュードとフーガ・作品16」は、1845年のシューマン夫妻のフーガ熱(二人でバッハのフーガを精力的に研究した時期)の中で作曲された曲ですが、このCDではローベルトの主題を用いた曲として採用されています。2曲目のブラームスの「ローベルト・シューマンの主題による変奏曲・作品9」は文字通りローベルトの色とりどりの小品・作品99の主題を用いた作品で、クララに献呈されている曲です。3曲目のシュンケ(1810-1834)はローベルトと同い年の作曲家ですが、彼の「グランドソナタ・作品3」は1832年に作曲されてローベルトに献呈された曲として採用されています。4曲目のローベルトの「トッカータ・作品7」は逆にシュンケに献呈された曲として採用されています。最後の「暁の歌・作品133」の採用理由は不明ですが、このCDのタイトルにもなっており、ピアノ曲として作品番号が付いた最後の曲であることから採用されたのでしょうか?
クララの「三つのプレリュードとフーガ」は仲々味わい深い演奏です。プレリュードは三曲ともに標準からやや遅めのテンポが採られて、弱音のタッチに気を配り、清楚な哀愁が漂う仕上がりになっています。一方のフーガは曲ごとに変化が与えられていて、曲全体でのコントラスト付けを意図しているようです。第1曲目のフーガは他で余り聴いた事が無いぐらいの超特急演奏で、複数声部の絡みあいを聴く間もなくダイナミックさだけを感じて終わる演奏になっています。第2曲目のフーガや一転通常よりもゆったりとしたテンポで演奏されて、複数声部が静かに空間に綾を織る演奏。第三曲目のフーガは標準的なテンポに戻り、ある意味では一番落ちついてバッハ的なフーガの色彩感を感じられる演奏になっていました。第1曲目のフーガがもう少し落ちついて演奏されれば文句は無いのですが、その点だけ残念です。
ブラームスの「ローベルト・シューマンの主題による変奏曲」は冒頭テーマ提示を初め、緩やかな曲はテンポを落としたとても大人しい演奏で、ニュアンスを込めて一音一音を大切に演奏していますが、抑え過ぎてやや陰影不足の様な印象を持ちました。しかし急速な曲では一転ダイナミックに、乱雑まであと一歩の所まで迫る演奏を繰り広げるので、曲ごとのコントラストの明確化を狙っているのでしょう。
シュンケのグランドソナタは初めて聴く曲ですが、4楽章からなる詩情溢れたチャーミングな曲です。曲風は同年代のシューマン、ショパン、リストの要素を足したような印象で(悪く言えば明快な個性欠ける)、作曲技法的な深みは少ないので現代に忘れられているのでしょう。第1楽章は比較的静かに演奏されるリリックな曲で、速度指示はアレグロですが、聴いているとモデラートからアンダンティーノの様な印象を受ける、通常は第3楽章に置かれても違和感の無い演奏です。これはピアニストの演奏解釈でそう聴かせているのかも知れません。第2楽章はローベルトのトッカータの主題の片鱗を感じさせるような急速なスケルツォで、不気味さと不安さが漂う曲になっています。第3楽章は幸福感に満ちたゆったりとしたアンダンテ。小刻みな音符で奏でられる右手のメロディラインがとても印象的です。第4楽章はアレグロ。これまでの楽章の主題を回顧しながらフィナーレに向かう急速な曲です。
ローベルトの「トッカータ」は全曲急速な曲なので、このピアニストには不利かも知れません。というのも急速な楽章ではタッチが少し荒れ気味になるのと、録音の為かピアノの音の立ち上がりが丸いので、音符が飛び交うようなこの曲だと音の分離が悪く、リズムやメロディラインがやや団子になって聞こえます。
「暁の歌」は全体的にテンポが遅めで、音符を噛み締めるような演奏になっています。仲々味わい深い演奏ですが、個人的にはもう少し抑揚があっても良いかなと感じました。
Sylviane Deferneはスイスに生まれて、ジュネーブ音楽院でマリア・ティーポとルイス・ヒルトブランドに学び、フランク・マーティン音楽コンクール第1位、ケルンピアノコンクール第2位などの受賞歴を持っています。現在はソリスト、室内楽伴奏者として活動しているそうです。
録音はややヒスノイズが感じられるし、レンジも広大ではありません。ピアノの音はやや丸く響きますが、音楽鑑賞の上で大きな不満はありません。
このCDは廃盤で、私はアウトレットショップのバークシャーレコードから購入しましたが、2009年3月時点でバークシャーのリストからも消えています。
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