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Natasa Veljkovic - Romance
Clara Schumann - Robert Schumann
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Natasa Veljkovic (Pf)
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レーベル;Gramola |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;98827 |
お気に入り度;★★ |
録音年月日;2007年5月31日〜6月2日 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;77分47秒 |
音質 ;★★★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン:三つのロマンス・作品21
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ローベルト・シューマン:子供の情景・作品15
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クララ・シューマン:ロマンス・イ短調
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クララ・シューマン:三つのロマンス・作品11
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ローベルト・シューマン(リストによるピアノ独奏編曲):献呈・作品25-1
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ローベルト・シューマン:謝肉祭・作品9
コメント
ナターシャ・ヴェリコヴィチはベオグラードに生まれて、4歳でピアノを始め、14歳でウィーン音楽大学のバドゥラ・スコダのクラスに入る事を許されたピアニストで、ウィーン音楽大学を卒業後はジュリアード音楽院とジュネーブ音楽院に学び、現在はウィーン国立音楽大学でピアノの准教授をしているそうです。
ヴェリコヴィチの演奏はとても気ままとうか、即興的というか、クララが聴いたら「楽譜に書いてある通りに弾きなさい」ときっと怒るだろうなぁと思わせる演奏です。テンポを気ままに揺らし、一つのフレーズの中でおもむろに立ち止まったかと思うと、突然に走り出して辻褄を合わせたり、他の人とは違うところにアクセントを置いたりするので、聴き始めた頃は違和感ばかりが先行しました。しかし全体は柔らかく演奏されますし、粗も無くテクニックは万全なので、他人と違う個性的な演奏を是とする昨今のコマーシャリズム的な価値基準に照らせば個性的である事は間違いなく、これが良い演奏とされるのかも知れません。この演奏に熱狂する人がいても私は不思議には思いません。
クララの三つのロマンス・作品21ですが、第1曲はやや遅めのテンポで柔らかく弾きながらも、不均質なリズムとアクセントで独特な雰囲気を漂わせています。後半は一音一音に強めのアクセントを付けて演奏し、感情の昂ぶりを表現しているようです。全体的に抒情に満ちているといれば満ちていますし、揺れ動く女心と言えばそうなのかも知れませんが、、 第2曲は標準的なテンポですが、スコア上では同じ長さで並ぶ音符を、1小節内で不均質に散りばめて演奏するので、少し鼻につく個性的な演奏になっています。第3曲は極めて速いテンポの演奏で、フィナーレまで一気呵成に弾いて行きますが、時折ガス欠の様なスローダウンがあるのが特徴です。
子供の情景は、様々な性格の小曲が集まった曲集だけに、好き嫌いが分かれると思われる演奏で、他の演奏者以上に曲と曲のコントラストが大きくなっています。また全体に渡って独特のアクセントが付けられているので、気まぐれで茶目っ気のある、感情の起伏の激しい子供の情景として描かれています。トロイメライが描く夢は、かなり現実部分の多い夢で、繰り返される一連のフレーズの前半こそ余韻豊かに夢らしく演奏されますが、後半部分にたゆたう感じは無く現実世界として明確なタッチで演奏されています。
クララのロマンス・イ短調はひとつひとつのフレーズを速めのテンポで演奏しながら、フレーズとフレーズの間にフェルマータの様な間を入れる事で全体のテンポを標準的〜遅めに保っている演奏になっています。そこに描かれているのは、出口の無い悩みに陥った感情でしょうか。
三つのロマンス・作品11の第1曲は3/4拍子で、左手の伴奏は1小節あたり12個の16分音符で出来上がっていますが、最初と7つ目の音符にフェルマータが加えられたような演奏になっていて、不可思議なリズムを作っています。第2曲は気まぐれなスローダウンが組み込まれた一方で、中間部分は強い鍵盤タッチで激しく感情を表現する音楽になっています。第3曲は比較的速めに演奏されますが、部分部分でのテンポの揺れは大きめです。
献呈は愛する人への熱い感情を淀みない音符で歌い上げる曲ですが、一連の音符4つ毎に休符が織り込まれたような、愛にためらいを感じるような演奏です。中間部はテンポを落とすかわりに全ての音を強く演奏して、感情の起伏を大きく表現しています。
謝肉祭もこれまでの繰り返しになりますが、良く言えばコントラストと起伏の大きなファンタジックな演奏であり、悪く言えば気まぐれで不可思議なテンポの演奏です。
音質はピアノの音もクリアでレンジも広く、バランスの良い録音と言えます。
このCDは2008年8月発売の海外現役盤で、アマゾンなどで購入出来ます。
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