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Beethoven Piano Concertos Nos. 2-5 / SOLOMON
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Solomon Cutner (Pf)
Philharmonia Orchestra / Andre Cluytens (No.2, No.4)
Philharmonia Orchestra / Herbert Menges (No.5)
BBC Symphony Orchestra / Adrian Boult (No.3)
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レーベル;EMI CLASSICS |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;5 65503 2 |
お気に入り度;★★ |
録音年月日;収録曲の項を参照 録音;MONO |
資料的貴重度;★★★ |
収録時間;77分56秒+71分38秒 |
音質 ;★ 〜 ★★★ |
収録曲
ベートーベン
CD1
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ピアノ協奏曲第2番・作品19 【Cluytens指揮、1952.11.3-6録音】
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ピアノ協奏曲第4番・作品19 【Cluytens指揮、1952.11.3-6録音】
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ピアノソナタ第14番「月光」・作品27-2 【1945.6.21, 7.9, 8.9-10録音】
CD2
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ピアノ協奏曲第3番・作品37(カデンツァ:クララ・シューマン) 【Boult指揮、1944.8.8-9録音】
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ピアノ協奏曲第5番「皇帝」・作品73 【Menges指揮、1955.5.13-15録音】
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SOLOMON CONCERT RECORDINGS 1
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Solomon Cutner (Pf)
Concertgebouw Orchestra / Eduard van Beinum (Beethoven)
Kansas City Philharmonic Orchestra / Hans Schweiger (Tchaikovsky)
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レーベル;Appian Publications & Recordings (APR) |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;APR 5651 |
お気に入り度;★ |
録音年月日;収録曲の項を参照 録音;MONO |
資料的貴重度;★★★ |
収録時間;67分01秒 |
音質 ;☆ |
収録曲
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ベートーベン:ピアノ協奏曲第3番・作品37(カデンツァ:クララ・シューマン)【Beinum指揮、1952.12.18録音】
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チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番・作品23【Schweiger指揮、1952.1.29-30録音】
コメント
クララのカデンツァを用いたベートーベン・ピアノ協奏曲第3番を収録した、ソロモンのCDです。
クララはベートーベンの3番と4番のカデンツァを残していますが、10年間に渡り調べた限りでは4番の録音は存在せず、3番もソロモンが3種類の音源を残しているのみの様です。楽譜は1870年から出版されており、他のピアニストも演奏しているとは思うのですが、ネット上に掲載されるCD収録曲の情報にカデンツァの作曲者が明記される事が希なので、ソロモン盤以外の録音を探し出す事が出来ていません。
ベートーベンピアノ協奏曲第3番・第1楽章のクララのカデンツァについてはソロモン/メンゲス盤のCD解説で書いていますので、こちらにも再掲載しておきましょう。
いきなり本題のクララのカデンツァの話題に入りましょう。通常弾かれる(ベートーベンの?)カデンツァとクララのカデンツァを聴き比べると、当然ですがかなりの違いがあります。しかしどちらも第1楽章に現れるテーマをいくつか取り上げて、変奏、展開してゆく点では共通です。通常のカデンツァは第1楽章前半に現れるテーマ、主題提示部のテーマを基本としており、音の流れも(変な言い方ですが)ベートーベン的です。音が大きなサインカーブ(波)を描くかのように鍵盤の右から左、左から右に一気にかけ降りたり登ったり、高い所で留まったりする形が多用されています。私個人の感覚では、5番「皇帝」の第1楽章などにもよく現れる、典型的なベートーベンの音の流れを感じるのです。
一方のクララのカデンツァですが、第1楽章中間部、カデンツァに入る手前辺りで出現するテーマを基本としています。つまり主題展開部のメロディや和音進行で、私の耳には(とっても変な言い方ですが)音の流れがシューマン的なのです。正真正銘ベートーベンが書いた第1楽章中間部にあるメロディライン&和音なのですが、私がこの曲の全体像を理解する前にカデンツァだけを抜き出して聴き比べたときに、クララのカデンツァはローベルトの交響的練習曲から採ったのか?と誤解したほどなのです。ひとつのメロディラインは小刻みに揺れながら登り降りする音型です。通常のカデンツァの方で使われている鍵盤の右から左、左から右へと一気にかけ降り、かけ登る物とは異なります。もう一つは登りたくても登れない様な複雑な和音の進行がカデンツァ後半部に現れます。どちらも私の耳にはベートーベンと言うよりも、シューマンの交響的練習曲的なのです。
それで、クララのカデンツァを聴いた後に交響的練習曲を聴いてみました。すると、やはり似たようなメロディライン、和音進行がありました。それは第3エチュード(第4曲)、第5エチュード(第6曲)、遺作の第5変奏(終曲)あたりに近似性を感じます。登りたくても登れないような和音進行は第7エチュード(第8曲)によく似たものがあります。
カデンツァとはソリストが自由に演奏できるパートですが、その曲と関係のない演奏をする筈はありませんね。だからその曲の中にあるテーマをいくつか拾って変奏、展開して行くのが通常だと思います。そしてクララのカデンツァを聴いて思ったことは、クララはベートーベンの中からシューマン的な部分(それは多分彼女が本能的に好きな音楽でしょう)を選んで作曲したのだな、という事です。それは意図したと言うよりも、彼女の必然だったと思います。
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ソロモンの演奏は概ね既に掲載しているメンゲス盤と同じですから、この解説では録音時期の違いによる音質の違いについて書いておきます。ベートーベンの3番については以下の3種類の録音が存在しています。
指揮者 |
オーケストラ |
録音 |
CD |
Herbert Menges |
Philharmonia Orchestra |
1956年8月 |
EMI Classics 7 67735 2
Testament SBT-1220
EMI Classics 2 06102 2 |
Sir Adrian Boult |
BBC Symphony Orchestra |
1944年8月8-9日 |
EMI Classics 5 65503 2
NAXOS HISTORICAL 8.110682 |
Eduard van Beinum |
Concertgebouw Orchestra |
1952年12月18日(Live) |
APR 5651 |
この中で最も録音状態が良いのはメンゲス盤です。1956年録音と新しく、唯一のステレオ録音であり、リマスター時にノイズも上手にカットされているようで、ヒスノイズは多少目立つ物の普通に聴いていて最新録音とさほど遜色ありません。
次に録音が良いのはボールト盤ですが、1944年とかなり古いモノラル録音になり、SPレコードを聴いている様な盛大なヒス&スクラッチノイズと狭いレンジの音楽になっています。但しそれにさえ我慢すれば、帯域バランスは比較的自然で、聞き疲れはあまり大きくありません。なおこのページの最初に紹介しているCDでは、ベートーベンの3番と月光のみが1940年代の録音で古く、ヒス&スクラッチノイズに悩まされますが、他の2番、4場、5番「皇帝」は録音がやや新しいために、モノラル録音ながらノイズが少なく聴きやすくなっています。
最後がバイヌム盤です。録音は1952年と古くは無いのですが、ライブレコーディングとの事で、まるで客席から海賊録音したかのような劣悪な音質です。曲が始まるとまずビックリさせられるのが盛大なノイズです。ゴボゴボ、モコモコとした騒音の穴蔵の中から遠くの演奏を聴くような録音になっていて、レンジも極めて狭く、それでいてピアノの中高音のみは耳に突き刺さるような鋭さを持っています。ベートーベンにしても、チャイコフスキーにしても音質は同じで、余程のソロモンファンの方以外は手を出されない方が良いかと思います。
以上から、ソロモンによるベートーベンのピアノ協奏曲を聴かれるのなら、メンゲス盤をお勧めします。数種類のCDが出ていますので、現役で購入可能な物もあります。
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