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Piano Trios Clara Schumann, Robert Schumann, Worfgang Rihm
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BOULANGER TRIO
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レーベル;ARS Produktion |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;ARS 38048 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;2008年3月 録音;DSD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;66分23秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン:ピアノトリオ・作品17
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ローベルト・シューマン:ピアノトリオ・作品110
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ヴォルフガンク・リーム:見知らぬ情景III
コメント
このCDは2009年2月末に発売になったもので、姉妹の女性作曲家、リリー&ナディア・ブーランジェの名前を冠した女性三人のトリオ、ブーランジェ・トリオがシューマン夫妻のピアノトリオ他を録音しています。
ブーランジェ・トリオは2006年にハンブルグ結成されて、その直後からコンクール入賞とリサイタルを繰り返して多方面に活躍しています。この解説を書くためにライナー・ノーツを初めて読んでみましたが、高水準な演奏を既に聴いていましたので、その内容に直ぐに納得しました。個々の奏者の経歴はライナーノーツに掲載されていませんが、ブーランジェ・トリオのサイトに経歴がありましたので、簡単に紹介しておきましょう。
ピアニストのカーラ・ハルテンバンガーは1977年ブカレスト生まれで、4歳でテレビに出演し、7歳で既に録音しているとありますので、ルーマニアでは神童に近い存在なのでしょう。11歳の時にブカレストで初リサイタルを開いています。1990年からはドイツに住んで、ソリスト及び伴奏者として各地で活躍しています。
ヴァイオリニストのビルジット・エルツは1979年ドイツ生まれで、5歳からヴァイオリンとピアノを始めて、9歳でテレビ放映されたとありますので、やはり早熟の天才なのでしょうか。その後は各地でリサイタルを開いていて、京都にも演奏に来たそうです。
チェリストのイローナ・キントは1972年ドイツ生まれ。最初はアメリカに渡って音楽を学んだ後で、欧州に戻ってユーディ・メニューイン・アカデミーに入り研鑽を積んだそうです。
最初にこのCDを聴いたのはネット作業をし「ながら」ですが、シューマン夫妻のトリオは素直に聴き通してしまえる自然さがあります。どこにも嫌みな所が無く、さりとて技巧や音楽表現を強調するようなハッタリもありません。
ただ、最後のリームの曲が流れて雰囲気は一変しました。これは不協和音に満ちた現代曲ですが、現代曲嫌いの私が引き込まれる程の力強さと繊細さが同居した演奏になっています。リームの曲の音階が日本の能の音楽に多少近い雰囲気を持っていることが幸いして、現代曲嫌い日本人の私の耳を開いたのかも知れません。リームの見知らぬ情景IIIはこのトリオの十八番らしく、細部に渡り力強さと自信に満ちた演奏が繰り広げられています。
改めてシューマン夫妻のトリオに傾聴すると、自然に聴き流せるのは後述する録音がややまろやかで、音量レベルもやや低めになっている事が理由の一端で、ボリュームを上げて聴けば各奏者の息遣いや情熱が音を通じて伝わってきました。
クララのピアノトリオは第2楽章スケルツォが標準よりもやや遅めのテンポで演奏される以外は、全体的にやや速めのテンポで演奏されて、楽章毎のテンポのコントラストが意図的に弱められているようです。このトリオが表現しているのは、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの三者が甘く語り合う音楽ではなく、優しいながらもお互いが自立心を持った存在で、気丈な会話を繰り広げる音楽のようです。曲全体が推進力豊かに演奏され、細部に至るまで迷いやテクニックの不全から来るぎこちなさは感じられず、全ての音符が自信に満ち溢れた響きを伴ってきます。速めのテンポで甘さを弱めたとなると、無味乾燥な音楽になりがちですが、各楽器の響きはチャーミングで音楽が活きており、無味にならないところにこのトリオの力量を感じます。
ローベルトのピアノトリオ・作品110はクララのトリオに比べると一段と力強さと構成力に満ちた曲ですが、このトリオの演奏は推進力と力強さに溢れながら、荒々しさとは無縁なので、とても魅力的に響いてきます。緩やかに演奏されるパートと急速に演奏されるパートのコントラストがクララのトリオよりも明確で、緩やかなパートでのピアノが甘くまろやかに語りかけるので、続く速いパートに移った時のコントラストがとても魅力的に聞こえます。クララの演奏とは少し違っていますが、より手慣れている演奏ゆえでしょうか。クララの演奏にも殆ど不満はありませんが、ローベルトのこのコントラストを味わうと、クララ側にもこれが欲しかったなぁと思いました。
録音はDSD、つまりスーパーオーディオCDですが、このフォーマットを再生するCDプレーヤーを持っていません。通常のCDプレーヤーによる再生ではハイファイ的な音質ではなく、高域、低域の伸びも標準からやや狭めで、透明感もいまひとつですが、弦楽器が刺激的に響くことは無く、自然で聴き疲れしない音質です。
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