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Clara et Robert Schumann, Romances, Variations, Grande Sonate
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Pierre-Alain Volondat (Pf)
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レーベル;Saphir Productions |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;LVC1085 |
お気に入り度;★★ |
録音年月日;2007年12月13-15日 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;77分30秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン:ロマンス・イ短調
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クララ・シューマン:3つのロマンス・作品11
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クララ・シューマン:ローベルト・シューマンの主題による変奏曲・作品20
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ローベルト・シューマン:ピアノソナタ第1番・作品11
コメント
ピエール=アラン・ヴォロンダは1962年生まれで、パリのOrleans Conservatoire と Conservatoire National Superior de Musiqueに学び、1983年エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝したピアニストです。驚いた事にクララの曾孫弟子だそうで、彼の師匠のひとりにヴェラ・ムーアという女性がいるのですが、この人はボルヴィックに学び、ボルヴィックはクララの愛弟子であったとの事です。
ヴォロンダがクララの曾孫弟子である知識無しにこのCDを初めて聴いた時、あるお話が頭に浮かびました。多分皆さんも耳にした事があると思いますが、各国の人間性を風刺した笑い話で、ある船で火災が発生した際に、船長が乗客を速やかに海に飛び込ませて避難させる為に、機転を利かせて乗客の国籍によって次のように指示を使い分けたと言う物です。
イギリス人に対しては「紳士はこういう時には飛び込むものです」
ドイツ人に対しては「規則で海に飛び込むことになっています」
アメリカ人に対しては「海に飛び込めばヒーローになれますよ」
日本人には「皆さんもう飛び込んでいますよ」
そしてフランス人には「海に飛び込んではいけません」
クララの弟子に対する口癖は「書いてある通りに弾いて下さい。優れた洞察力を持つ人にとって、全ては楽譜に書いてあります。」ですが、ヴォロンダは見事に楽譜を無視して弾いています。それゆえに、彼がクララの曾孫弟子と知って驚いたのです。クララの教えが曾孫弟子に伝わる迄にどのように変化したのかは知る由もありませんが、恐らく先生はきちんと「楽譜に書いてる通りに弾いて下さい」と伝えたのでしょう。でもフランス人のヴォロンダは上記の笑い話に倣って教えを無視したのかも知れません。
冒頭のクララのロマンス・イ短調は極めてゆっくりとしたテンポで、全ての音符にフェルマータを付けたような空中分解直前のテンポによる個性的な演奏になっています。演奏時間は6分8秒で、岩井美子さんのやはりゆったりとした4分17秒の演奏の1.5倍の時間を掛けています。
三つのロマンス・作品11、第1曲の全体的なテンポは標準的ですが、部分部分で走ったり、立ち止まったりするので、違和感が漂い始めます。第2曲はゆっくりとしたテンポに変わり、独特のアクセント、異様に長い休符などが随所に組み込まれています。第3曲も遅いテンポで演奏され、途中ある筈の音符が繰り返し消されたり、長過ぎる休符をばらまいたりと、クララとは別の世界が構築されています。
ローベルト・シューマンの主題による変奏曲も全体が極めてゆっくりと演奏されて、変奏ごとのテンポのコントラストが殆どありません。例のごとく勝手に省略される音符、気ままに立ち止まったり走ったりするリズム、長過ぎる休符などが散りばめられている事に加えて、クララがテンポを落とし情感を込める様に指示している所を急に小走りで駆け抜けたりするので、私の耳には極めて退屈で腹立たしく響きます。
CDの解説に「ヴォロンダは自分の内側から作品を照らし出し、そして鍵盤に手を置いた時に奇跡が起きて、、、(云々)」と書かれています。確かにヴォロンダの演奏は他に聴いた事が無いくらいに個性的であり、荒々しい所は微塵も無く、自分の心の内を表現してはいますが、それは彼の世界であって、作曲家の世界では無いと思います。しかし個性を尊重する欧米の聴衆にはこのようなスタイルがもてはやされるのかも知れません。
音質は最新録音に相応しくクリアで、特に問題はありません。
このCDは2008年5月に発売されていますが、流通は欧州の一部に限られるようで、国内代理店や大手CDショップは勿論、アマゾンの日本、米国、英国にも無くて、私はアマゾン・フランスから取り寄せています。月日が経てばより入手しやすいショップで手に入るかも知れませんが、、
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