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Clara & Robert Schumann
Piano Trios in G Minor Op.17 & D Minor Op.63
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The Atlantis Trio
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レーベル;musica omnia |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;mo0207 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;2005年5月23-25日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★ |
収録時間;62分47秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン:ピアノトリオ・ト短調・作品17
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ローベルト・シューマン:ピアノトリオ第1番・ニ短調・作品63
コメント
アトランティス・トリオは古楽器を特徴としたトリオのようです。そこで、まずはメンバーの紹介をしましょう。
フォルテピアニストのPenelope Crawfordは1975年から1990年まではArs Musica Baroque Orchestraのパープシコードとフォルテピアノの奏者として活動していましたが、現在はミシガン大学のピアノコースで18世紀/19世紀ピアノの博士課程で教鞭を執っています。彼女が弾くフォルテピアノはConrad Graf, Vienna, OPUS 2148, 1835で、スウェーデンで発見された後で二年間かけてレストアされたもので、ライナーノーツに写真が無いので確認出来ないのですが、金メッキされたフレームと美しいキャビネットの装飾、そして4本のペダルを持っているそうです。。
ヴァイオリニストのJaap Schroderはオランダ人。室内楽奏者、ソリスト、指揮者、教育者という複数のキャリアを持つ人で、17世紀から18世紀にかけてのヴァイオリンの研究にも携わり、古楽器に相応しい演奏スタイルを旨としたアンサンブルを幾つか立ち上げています。ソリスト、室内楽奏者として幾つか録音を残している一方で、エール音楽大学やルクセンブルグ音楽院などで教えています。彼が使うヴァイオリンはMatteo Gofriller, Venicee, C.1700です。
チェリストのEnid Sutherlandはチェロとヴィオラ・ダ・ガンバの奏者と作曲家という側面を持つ人で、ミシガン大学で学位を取得しています。やはり古楽器の演奏を主体とする活動をしているようで、Ars Musica Baroque Orchestraを初めとして、幾つかのアンサンブルでバロックを主体とした演奏活動をしているそうです。彼女が使うチェロはanon Tyrolean, 18th centuryです。
18世紀から19世紀に掛けての楽器で演奏されるクララのピアノトリオは、渋い味わいの音楽になっています。ここで弾かれるコンラートグラーフは同時代のフォルテピアノ同様に、音の立ち上がりもまろやかで、殆ど残響しない素朴な音色を持っています。加えてこのフォルテピアノは音量も限られるので、ピアノトリオでありながら音量、存在感共にヴァイオリンやチェロの影になってしまっています。曲全体のテンポは標準的ですが、コンラートグラーフの特性に合わせるように速い節回しでも丁寧に一音一音弾かれますので、誠実で渋味のある音楽になっています。
曲全体の主導権はヴァイオリンが取っています。そのヴァイオリンとチェロの音色は、現在普通に用いられている楽器と比較してもさほど大きな違いの無い音色を持っていますが、子細に見れば響き方に高音成分が少なく、残響も控えめな傾向が伺えて、素朴で誠実な演奏を仕上げるのに一役買っています。
コンラートグラーフと言えば、小倉貴久子さん他によるクララのピアノ協奏曲のCDがあります。あちらは伝・コンラートグラーフ1819〜1820年で、ピアノ属とは思えないまるで弦楽器をバチで叩いた時に出るような音色で、他の弦楽器と同質の響きで見事に溶け合いましたが(それゆえピアノ協奏曲という雰囲気とは違っていましたが)、こちらのコラートグラーフ1835はフォルテピアノらしい響きを持っています。その意味で「コンラートグラーフ」と知って抱いた期待は外れましたが、フォルテピアノらしい演奏は堪能出来ます。
ローベルトのピアノトリオ第1番も概ねクララのピアノトリオと同様の印象ですが、アトランティス・トリオにとって恐らくクララのトリオよりも演奏慣れしているのでしょう、各楽器がより一層高らかに音楽を歌い上げるので、聴いていてより楽しく、エネルギッシュな音楽になっています。不思議とフォルテピアノの音量もクララの曲よりも大きく聞こえて、三者が有機的に絡み合ったチャーミングなハーモニーを奏でています。
音質はまずまずクリアで三つの楽器の分離感もよく、問題はありません。
このCDは2008年8月の発売で、2009年5月現在amazonなどの大手CDショップから購入可能です。
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