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Edward MacDowell / Clara Schumann
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Frederick Moyer (Pf)
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レーベル;JRI Recordings |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;J122 |
お気に入り度;★★★ |
録音年月日;2005年7月7-10日 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;50分22秒 |
音質 ;★★★ |
収録曲
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エドワード・マクドウェル:ピアノ協奏曲第2番・ニ短調・作品23
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クララ・シューマン:ピアノ協奏曲・イ短調・作品7
コメント
さてさて、このCDをどのように評価しましょうか。あるいは皆さんはどう思われますか?
ピアノ協奏曲のCDですが、奏者にはピアニスト一人しか記載されていません。それはこの録音が通常の方法では無いからです。
まずマクドウェルの協奏曲は、マイナスワンCD(器楽協奏曲から主役の器楽パートを除いて、オーケストラパートだけ録音し、個人で協奏曲の練習を出来るようにしたCD)の使用許可を得て、ピアニストのモイヤーがピアノパートを重ね録音しています。元になったマイナスワンCDはpiano-pal.comで販売されています。ちなみにそのオーケストラパートの奏者は、Nayden Todorov指揮、Plovdiv Philharmonic Orchestraです。クララの協奏曲の製作方法はもっと異端で、オーケストラパートは実演奏ではなく、MIDI音源によるコンピューターミュージックになっています。これとモイヤーによるピアノ独奏を重ねて協奏曲に仕立てています。
制作側にとってコストの嵩むオーケストラを雇わずとも協奏曲のCDが出来てしまうのは画期的かも知れませんが、聴衆側にとってCD価格は変わらずフルプライスですし、仮に少々安くなった所で、少し古いだけの名演がボックス物なら一枚単価100円で買える時代なので、メリットを感じませんし、肝心の音楽が心配になります。CDのジャケットには21世紀のテクノロジー、、、と謳っていますが、さてさて、、21世紀はクラシック音楽までインスタントな芸術になるのでしょうか。
マクドウェルの協奏曲は他にCDを所有していないので、この演奏自体の良否を評価することは出来ませんが、別々に録音されたにせよピアノもオーケストラも実演奏なので、違和感無く聴く事が出来ます。敢えてあら探しをすれば、音場再現性の極めて良いスタックスのヘッドフォンシステムで聴くと、ピアノが奏でられる空間とオーケストラの演奏空間が異り、ピアノが狭い部屋で演奏されているのが分ってしまいます。また両者が同時に演奏される時に、聴衆としてどのポジションから聴いているのか分らなくなり、まるで下手なミキシングをしたマルチチャンネル録音の様で、ピアノが定位する場所にオーボエ奏者が入り込んできます。まあ、余り深く考えずに聴けばそれなりに楽しめるのですが、一旦気になり出すと気になって仕方ありません。ただ、最近のJ-POPや電子系音楽はこれ以上に酷い録音になっていて、実在しない空間から声と楽器音だけが電子リバーブを掛けて出てくるので、音場感、定位感の良過ぎるシステムで聴くと苦痛になります。それに比べれば二つの実演を重ねたこの録音はマシとも言えます。
コンピューターミュージックと化したクララのピアノ協奏曲ですが、先入観を捨てて聴くと普通に楽しめる音楽になっています。その意味では上手く音作りをしていると思います。良い点はオーケストラの音が濁らずに、各楽器の音が明瞭に聴ける事と、ピアノの演奏が悪くない事です。モイヤーはわざわざ知名度の低いクララの協奏曲を取り上げるだけあってか、柔らかいピアニズムで繊細さと共に演奏しています。オーケストラの存在感も自分でコントロール出来るためか、下手に競い合う事も無くて、両者のバランス、掛け合いは適度に保たれています。
実際のオーケストラ録音と異る点は、やはり空間再現性で、どうしても奥行き感が無く、各楽器が横一列に並んだかの様に定位します。それから持続音が自由自在に変化出来る弦楽器や管楽器の音をMIDIとしては上手く作っているなと感心しましたが、細かく見れば管楽器に息継ぎが無くて、奏者の呼吸が感じられないとか、各楽器の音の切り方が毎回殆ど同じとか、人間業ではない部分も見つける事が出来ます。また第2楽章のチェロとピアノのデュオの時のチェロの音色が無機質に感じられました。ただクララの協奏曲は実在しない空間とはいえ、ピアノとMIDIが同列の空間で扱われているので、マクドウェルの協奏曲の様なバラバラの空間の音楽が同時になっている違和感はありませんでした。
音質は、定位感とか音場感を別とすれば、各楽器はクリアに聞こえます。最上のアコースティック録音には適いませんが、気楽に聴く限りにおいて大きな不満は出ないでしょう。
このCDは2008年10月発売で、2009年6月時点ではamazon.co.jpにて購入可能です。
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