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Kraht ja doch kein Hahn danach..
Musik von Komponistinnen aus vier jahrhunderten
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Susanne Schrage (Fl), Ina Otte (Pf)
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レーベル;audiomax |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;Audiomax 703 1326-2 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;2004年7月26-28日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★ |
収録時間;69分26秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
- Claude Arrieu (1903-1990): Sonatine
- Francine Aubin (1938-): Aquarelles
- クララ・シューマン (1819-1896):ヴァイオリンとピアノの為の三つのロマンス・作品22(フルートによる演奏)
- Germaine Tailleferre (1892-1983): Forlane
- Grete von Zieritz (1899-2001): Bilder vom Jahrmarkt
- Isabella Leonarda (1620-1704): Sonata Duodecima op.16
- Fanny Mendelssohn Hensel (1805-1847): April from Das Jahr(原曲通りのピアノ独奏演奏)
- Lili Boulanger (1893-1918):
Nocturne
D'un matin de printemps
- Heike Beckmann (1959-): Yvy
コメント
17世紀から21世紀までの400年に渡る女性作曲家の室内楽をフルートとピアノで演奏したCDです。但し何故かファニー・メンデルスゾーンの「4月」だけはオリジナル通りのピアノ独奏演奏になっています。ファニーファンでもある私は、4月のフルート版が聴けると期待したのですが、買ってみてその点だけは残念でした。しかしそれでもなお素敵なCDです。
Claude ArrieuのSonatineは、可愛い女の子が主人公のおとぎ話かファンタジックなアニメの主題歌の様な雰囲気を持った曲で、楽しくも不思議なメロディに聴いているこちら側も楽しくなってきます。
Francine AubinのAquarellesはフランス的な妖しい和音が交じった、コミカルで叙事的な曲です。宮崎駿のアニメの中間挿入歌に使ったら似合いそうだな、と思いました。
クララの三つのロマンスの第1曲はゆったりとしたテンポで始まり、情感をこめて淑やかにフルートがメロディを綴って行きます。第2曲、第3曲も同じ印象で、比較的ゆっくりとしたテンポで丁寧に演奏されています。全体を通じてオクターブ移行は最小限に抑えられており、オリジナルを知る人が聴いても違和感は少なくなっています。ヴァイオリンよりも一段と高いフルートの音で主旋律を歌うので、そこに現れる少女像も一段と繊細な人になっており、独自の存在感が漂う、聴いていて飽きないロマンスになっています。
タイユフェールのForlaneはちょっと日本の民謡にも相通じる、哀愁漂う短調のメロディによる2分程の小曲です。
Grete von ZieritzのBilder vom Jahrmarktは現代音楽で、不協和音が主体ではありますが、以前としてコミカルな叙事的要素を持っており(恐らく奏者の選曲の好みなのでしょうか)、いたずらな妖精が悪さをするかの様な情景が思い浮かびます。
Isabella LeonardaのSonata Duodecimaは17世紀の音楽なので和音やメロディがシンプルで、それだけに素直な美しさと哀愁に満ちた曲になっています。雰囲気は同時代のテレマンの木管と通奏低音のソナタに似ており、個人的にはクララの曲と並んでこの曲が一番聴きやすく、好きです。
ファニーの4月はこのCDで唯一の、そしてオリジナル通りのピアノ独奏です。演奏自体は素敵ですが、12カ月全曲を収録したCDを沢山持っているのと、フルート版の期待が大きかっただけに評価は無しとしておきます。
リリ・ブーランジェのノクターンは月夜に蛍が漂う様な、私好みの淑やかなメロディを持った曲で、ピアノが蛍をのほのかな輝きを、フルートが月夜の空気感を繊細に表現している様に聞こえます。D'un matin de printempsは如何にもフランス的な和音の響きの中で、やはりこの奏者の好みなのかコミカルな雰囲気を持った曲です。
Heike BeckmannのYvyは一転アメリカンな陽気なリズムの曲で、途中で掛け声が入ります。フルートとは同時では無いので、恐らくSusanne Schrageがボーカル参加しているのでしょうか。何れにせよ楽しい曲です。
全体を通じて、不協和音が多くてもコミカルな楽しさを忘れない様な選曲がされており、その中でクララ、ファニーとIsabella Leonardaの三人の曲が協和音の繊細な音楽で一息つけるオアシス的な配置になっています。
Susanne Schrageはドイツ・ケルン生まれ。数多くの在欧の先生に師事した後で、主に室内楽奏者として活動しています。一方のIna Otteはドイツ・ブレーメンの生まれ。やはり在欧の先生に師事した後で、ソリスト、歌曲/室内楽伴奏者として活動しています。ふたりは1999年から共に女性作曲家の作品の発掘と公演に尽力しているとの事です。
音質はクリアで、特に問題はありません。
なおドイツのアマゾンに表示されているこのCDの発売日(2005年1月)を見て驚いたのですが、フルートによるクララの作品22のCDとして世界初と思っていたJeffrey Khaner盤(2005年11月発売)は世界で二番目でした。但し録音日ではJeffrey Khaner盤が2004年1月、こちらが7月なので順番が逆転します。そのことに何故2009年まで気付かなかったかと言えば、このCDが欧州域内でのみ流通しているようで、私が頻繁にチェックする日本とアメリカのCDショップのカタログに掲載されていない為です。2009年6月現在でもこのCDは主な日本/米国のCDショップのカタログでは見つける事が出来ず、アマゾンでは英国、ドイツ、フランスでのみ購入可能です。
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