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Intimacies
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Stephanie Wendt (Pf)
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レーベル;GOLDEN WATTLE |
入手性;廃盤 |
CD番号;GWP 440 893 |
お気に入り度;★★★★★ |
録音年月日;CDに記載無し((P)マークは2004年) 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;66分41秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン:ローベルト・シューマンの主題による変奏曲・作品20
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ローベルト・シューマン:幻想小曲集・作品12
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クララ・シューマン:音楽夜会・作品6から、第2曲ノットゥルノ
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クララ・シューマン:三つのロマンス・作品21から、第3曲
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クララ・シューマン:三つのロマンス・作品11から、第1曲
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ヨハネス・ブラームス:ローベルト・シューマンの主題による変奏曲・作品9
コメント
クララ、ローベルト、ヨハネスの三人の作品を収録したCDで、しかもクララの「ローベルト・シューマンの主題による変奏曲」で始まり、ヨハネスの「ローベルト・シューマンの主題による変奏曲」で終わるという拘りを感じさせる選曲になっています。
各曲の成り立ちをみれば、作曲が一番速いのがクララの音楽夜会・作品6で1836年。ローベルトはこのノットゥルノの旋律をノベレッテン・作品21の第8曲の中で用いています。ローベルトの幻想小曲集は作曲が1837-38年。それを挟むようにクララの三つのロマンス・作品11が1839年でローベルトに献呈されています。時が流れてクララのローベルト・シューマンの主題による変奏曲が1853年の作曲で、夫ローベルトの誕生日プレゼントとして献呈されました。また三つのロマンス・作品21の第1曲は1853年に作曲されて、作品20と共にローベルトに献呈されています。しかし曲全体は翌年ヨハネスに献呈されています。このCDで演奏されているのが第1曲ではなくヨハネスのみに献呈された第3曲であるのは、単なるピアニストの好みなのか、深い意味がるのかは分りません。最後にヨハネスのローベルト・シューマンの主題による変奏曲は、クララの作品20に触発されて同じ主題を用いて1854年に作曲され、クララに献呈されています。言うまでもありませんが、クララ、ヨハネスふたりの「ローベルト・シューマンの主題による変奏曲」は、ローベルトのブンテ・ブレッター・作品99の主題を用いた変奏曲で、共に曲の後半でクララの象徴であるロマンス・ヴァリエ・作品3の主題とローベルトの主題を絡めて夫婦の絆を表現するという同じ構造を持っています。更にヨハネスの曲のエンディングは、ローベルトの「クララ・ヴィークの主題による即興曲・作品5」の1833年版と全く同じ終わり方をするという、三人の絆が縦横無尽に織り込まれた曲になっています。
Stephanie Wendtはニュージーランドで生まれて、5歳からオーストラリアでピアノを学び、その後は米国に渡り、インディアナ大学で学位を、ミネソタ大学で博士号を取得しています。現在はインディアナポリス大学とミネソタ大学で教える一方で、ラジオ番組のプロデューサーとしても活動していて、2003年には彼女一人によるクララ・シューマンに関するドキュメンタリー「Clara's Visitor」を発表して賞をもらったそうです。その意味でクララとその周辺に対する理解度は人一倍深いと思われます。
そのStephanie Wendtの演奏は繊細さとダイナミックさが同居した素敵なものになっています。個人的な趣味で言えばクララの曲の強奏部はもう少しだけ柔らかい方が良いのではと思わせますが、しかしこのCDのメインディッシュであるローベルトやヨハネスの曲は、むしろWendtのスタイルの方がコントラストやリズムの妙が際立つので、これで良いのかも知れません。
Wendtの演奏で個人的に一番ゾクゾクするのは、弱音の繊細さです。スタインウェイの音の減衰を十分に味わうようにゆったりとした間を置きながら、静かに繊細な音楽を紡いで行くのは、流石に三人の音楽に共感しているピアニストだけのことはあります。この繊細さの上にダイナミックな強奏部が乗りますので、墨絵の様な繊細なトーンの上に、西洋絵画の様な色彩を感じる事が出来ます。全体を通じて楽譜通りの演奏をしており、変なアクセントや節回し、速過ぎたり遅過ぎるテンポはありません。それでいて存在感のある演奏をしていますので、高水準な演奏だと思います。
音質はデジタル録音として標準的で、バランスも自然で聴き疲れしませんので、問題はありません。クリスタルの様な透明感とか、スタインウェイのハンマーが弦を叩く瞬間の硬質な音の立ち上がりとかは聴き取れず、音の角が多少丸い傾向はありますが、音楽鑑賞にはむしろこちらの方が良いと思います。
このCDは大手CDショップのカタログに掲載された事は無いと思われます。2009年になって米国アマゾンのマーケットプレイスへの出品を見つけて、そこから中古で入手しましたが、該当ページには発売日などの情報が無く、アマゾンが新品時に扱っていないことが分ります。既に廃盤の可能性もありますが、発売元のサイトにはまだこのCDが掲載されています。
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