ホームに戻る 所有CDリストに戻る 手前のCD解説 次のCD解説
|
Jeffrey Khaner
JOHANNES BRAHMS, CLARA SCHUMANN,
ROBERT SCHUMANN
|
Jeffrey Khaner (Fl), Charles Abramovic (Pf)
|
レーベル;AVIE |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;AV 2075 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;2004年1月 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★ |
収録時間;61分55秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
-
ヨハネス・ブラームス :クラリネットソナタ第1番・作品120-1
-
ヨハネス・ブラームス :クラリネットソナタ第2番・作品120-2
-
クララ・シューマン :ヴァイオリンとピアノの為の三つのロマンス・作品22
-
ローベルト・シューマン :三つのロマンス・作品94
※全てフルートによる演奏
コメント
2005年秋に発売された、クララの3つのロマンス・作品22をフルートで演奏した世界初のCDになります。(2009年5月訂正、2009年に入手した別のフルートのCDが僅かに早く初出されており、発売順では世界で二番目のCDになりました。録音基準ではこちらが世界初です。)ブラームスの作品120もオリジナルはクラリネットで、フルートで演奏される機会は極めて少ないと思います。唯一シューマンの3つのロマンス・作品94だけがオリジナルの楽器指定にフルートが含まれていますが、こちらもチェロやオーボエで演奏される事が多く、フルート盤は数える程しかありません。フルートの好きな方には貴重なCDだと思います。
フルートによるブラームスのクラリネットソナタ・作品120は、本来のクラリネットによる演奏と聴き比べてもさほど違和感がありません。フルートとクラリネットの音程がほぼ1オクターブ違いなので、同じ調性で演奏されていますし、音域がはみ出すことによるオクターブ移行やそれを緩和する変奏が行われていないからでしょう。しかしクラリネットの持つ温和な音色や音楽の雰囲気に対してそこはフルート、高音による華麗さとスピード感のある音楽になっています。
クララの3つのロマンス・作品22の演奏も、音色がフルートである事を除けば原曲のヴァイオリンと聴き比べても違和感ありません。音域がヴァイオリンに近い為か、オリジナルの調性のままでオクターブ移行も殆ど無く、ヴァイオリンで多用されるビブラートもフルートで再現されています。ヴァイオリン以外の楽器に編曲された作品22としては、オーボエと並んで最も成功した音楽になっていると思います。
ヴァイオリンで聴くこの曲は妖艶でチャーミングな、美しい少女の体温を感じながらささやかれる様な音楽ですが、フルートの場合はもう少し大人の、透明感と清楚感を持った、スピード感にも満ちたクールな音楽になっています。ジェフリー・カーナーのフルートの音色は、透き通るような美音というよりも、少し尺八的なカスレ音を伴う趣のあるものです。私個人の好みとしては透き通るような音色の方が作品22には合っているかな、という気がします。とは言え、クララの曲の演奏として立派な存在感のあるものだと思います。
余談ですが、この解説を書いている時点で、作品22は原曲のヴァイオリンに加えて、オーボエ、チェロ、ヴィオラ、ホルン、フルートで演奏されるCDが発売されています。演奏指定されていない楽器で演奏する為には、奏者自らが編曲しなければなりませんが、これだけ多くの種類の楽器に編曲されている事は、クララの作品22が多くの人の心を惹き付け、名曲への仲間入りをしつつある証拠でしょうか。
ローベルトの作品94はフルートの楽器指定もあるので、音楽が極めて自然に紡がれています。もちろん聞き慣れたオーボエやチェロ、クラリネットとは異なる演奏ではありますが、細部に至まで無理がありません。そして前記の音域の低い楽器とは異なる、フルートならではのスピードと透明感のある世界が繰り広げられます。
ジェフリー・カーナーの演奏は余り大きな変化をつけない、奇をてらう所の無い誠実なもので、しかし細かいニュアンスは実に良く考えられてつけられています。誰が聞いても不満が出る事は無いでしょう。普段はフルートで演奏される事の殆どない4曲を収録したこのCDはお勧めです。
ジェフリー・カーナーは1990年からフィラデルフィア管弦楽団の主席フルート奏者を務める傍らで、ソリストとしても活躍しています。amazon.comで検索すれば彼のCDが6〜7枚出てきます。
ホームに戻る 所有CDリストに戻る 手前のCD解説 次のCD解説
|