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In Clara Wieck Schumann's
Circle
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Bichuan Li [李 璧傳] (Pf)
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レーベル;WA NUI Records(ハワイ/米) |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;WN 49706-2 |
お気に入り度;★★ |
録音年月日;不明(1996年?) 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★★★ |
収録時間;73分04秒 |
音質 ;★★ |
収録曲
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クララ・シューマン ローベルト・シューマンの主題による変奏曲 作品20
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マリエ・ヴィーク スケルッツォ
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アルヴィン・ヴィーク ロマンス 作品8-1
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ヨハネス・ブラームス グリュックのガボットからの編曲
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フリードリッヒ・ヴィーク メヌエット&トリオ
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ヴォルトマール・バルギール 三つの特徴的な小品 作品8
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ローベルト・シューマン クライスレリアーナ 作品16
コメント
ピアニストのビチュアン・リーは中国は上海生まれで、米国や東南アジアで活躍するピアニストだそうです。このCDはクララの没後100年を記念して製作されたとの記載がありました。
このCDにはクララの作品20、ヨハネスのガボット、ローベルトのクライスレリアーナを除けば、他では聴くことの出来ない極めて珍しい曲が収録されています。とりわけマリエ・ヴィーク、アルヴィン・ヴィーク、フリードリッヒ・ヴィークの曲を聴けるのはこのCDだけでしょう。
全体的な演奏は、楽譜を取り敢えず撫でているだけと言う感じのもので、あまり感激はありません。録音も残念ながらステレオの最低限の音質を確保したに留まり、軽々しく、拡がり感に乏しい物です。ちょっとワウを感じるのも残念です。従って、このCDの価値はクララの父、そして弟妹達の作品に対する資料的価値にあるということになります。そこで、クララの作品20とローベルトのクライスレリアーナの感想は抜きにして、それ以外の人達の作品の感想を述べてみます。
マリエ・ヴィーク(1832-1916)はクララから見れば異母妹です。クララの父フリードリッヒ・ヴィークはクララの母マリアンネと離婚し、その後クレメンティーネと再婚しました。マリエはそのクレメンティーネとの二人目の子供です。マリエ・ヴィークはピアニストそして音楽教師として活躍したそうで、クララの作品15はマリエに献呈されています。
さて、このマリエ・ヴィークのスケルッツォと題されたピアノ曲を聴いてみてビックリしたのですが、クララの四つの束の間の小品作品15の第四曲「スケルッツォ」と同じ曲でした。但し、クララの曲と比べると伴奏のつけかた、リズムの取り方に違いがあり、さすが!と思わせるクララの曲に対して、マリエの曲は若い少女の習作といった響きをもっています。
おそらく原曲はマリエ・ヴィークが作曲したのでしょう。それをクララがとても気に入って一流の作品に仕立てて作品15に取り入れ、その作品15全体をマリエ・ヴィークにプレゼントしたのだと思われます。クララはこのスケルッツォが相当のお気に入りの様で、後にピアノソナタ・ト短調(作品番号無し)の第三曲にも使っています。このピアノソナタはクララ唯一のソナタで、この曲を出版するために作品番号18(もしくは19)を残しておいたと言うほどの作品です。結果的にピアノソナタは出版されず、作品番号の18と19は欠番になってしまいましたが...クララのこのスケルッツォへのお気に入り度合いが伝わってくるようです。
アルヴィン・ヴィーク(1821-1885)はクララの弟で、フリードリッヒ・ヴィークとクララの母マリアンネの3人目の子供です。(いい忘れましたが、クララは最初の子供です。)CD解説によればヴァイオリニストだったそうです。
アルヴィンのロマンス作品8-1と題された曲ですが、最初の主題のメロディが何とも不格好で、とても音楽心ある人の作品とは思えません..が、中間部にゆくと突然優しいきらめきを持ったメロディに変わります。クララの作品6辺りからの引用が幾つか見られ、最後にまた不格好な主題に戻って曲を終えます。この冒頭部と中間部のアンバランスは、ピアニストのせいなのか、それとも楽譜の指示通りなのか、は謎です。
ヨハネス・ブラームスのグリュックからのガボットを聴いたことのある人は、ブラームスファンでも少ないのではないでしょうか?1852年作曲とありますので、まだシューマン夫妻に出会う前に作曲しています。その後この曲はクララに献呈されました。私はこの曲のCDを(クララに献呈されたという理由で)3〜4種類持っていますが、やっぱりこのCDの演奏は豊かさに欠ける感じがします。
フリードリッヒ・ヴィーク(1785-1873)は、シューマンの伝記を読んだことのある人なら誰でも知っている、クララの父であり、ローベルトのピアノの先生です。ヴィークのメヌエットとトリオと題された曲ですが、まるで頑固親父が怒鳴っているかのような勇ましい主題が提示された後、優しいメロディがそれを受けて展開して行きます。それが何度か繰り返されるのですが、まるでヴィークとクララの会話を聴いているようで、おかしくなってきます。ただ、さすがはクララの先生であるヴィーク。少なくともアルヴィンやマリエの曲よりも魅力的には聞こえます。
ヴォルトマール・バルギール(1828-1897)はクララの異父弟です。フリードリッヒとの離婚後、クララの母マリアンネはアドルフ・バルギールと再婚して、ヴォルトマールを産みました。ヴォルトマールは決して有名ではありませんが、他にCDも入手可能な作曲家です。彼の三つの特徴的な小品作品8は、上に挙げた人達(ブラームスを除きますが)の作品とは一線を画す、素敵なピアノ曲になっています。但し作風はクララとはかなり違います。第一曲は、幻想的な中にも超絶技巧を重視したような勇ましい曲です。第二曲は遠い想い出を思うような優しいアンダンテ(?)。結構ステキな曲です。第三曲は陽気な幻想曲..ちょっとフェリックス・メンデルスゾーンを思わせます。是非とも他のピアニストで聴いてみたいと思わせる佳品です。
このCDは2001年9月現在、Amazon.comに掲載されていて、購入可能となっています。ただ、他のCDショップでは見掛けないので、在庫僅少かもしれません。
Modified in September 2001
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