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Clara Schumann, Robert Schumann,
Franz Liszt
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Barbara Moser (Pf)
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レーベル;MUSICA Classics(オーストリー) |
入手性;輸入現行盤 |
CD番号;780027-2 |
お気に入り度;★ |
録音年月日;1996年12月15-17日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★ |
収録時間;59分29秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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クララ・シューマン;スケルッツォ 作品10
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クララ・シューマン;ローベルト・シューマンの主題による変奏曲 作品20
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ローベルト・シューマン;ピアノソナタ第二番 作品22
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フランツ・リスト;6つのコンソレーション
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フランツ・リスト;歌劇「ノルマ」の回想
コメント
このCDは、2〜3年前(1997〜1998年頃)から秋葉原の石丸電気で見つけていたのですが、何故か食指が動かず購入しませんでした。今年(2000年)の帰省の際にまた見つけて購入したのですが、その時にも食指は殆ど動かず、購入はかなり迷った結果です。その理由の一つには収録されている曲を既に沢山持っていることも有りますが、より大きな理由としてカップリングされている曲の不気味さ(何とクララとは性格の正反対なリストと一緒!)にありました。この悪い予感は当たってしまったようです。
最初の曲のクララのスケルッツォ作品10を聴き出して、第一印象は「なんとさっぱりした演奏なんだろう?」と言う事でした。感情とか深みとか言う物は余りなく、淡々と音符を紡いで行く...。スケルッツォの中間部のテンポの緩やかな所は比較的良いのですが、その前後のテンポの早い部分の情感と言う物があまり感じられません。
二番目の曲の、ローベルト・シューマンの主題による変奏曲作品20になると、いよいよBarbara
Moserの本領発揮(?)。世にも恐ろしい演奏が始まりました。最初の主題提示は非常に緩やかになされます。これは聴き慣れたテンポ...第一変奏から変奏が進むに連れて徐々にテンポが上がって行きますが、その変化の大きいこと...第二変奏にもなると「何でそんなに急ぐの?」という雰囲気に包まれます。第三変奏は遅い指示なので、一転して非常に遅いテンポで弾かれますが、第四変奏はまた急速になって..そして世にも恐ろしい第五変奏。これはもう破壊的な演奏です。人間の限界に挑戦するかの様なテンポの速さ。16分音符を64分音符で弾いているようなと言えば分かって頂けるでしょうか。まるで電動ミシンが最速モードでジャジャジャジャジャっと動いているような音がします。そこにはただ指先のテクニックだけがあり、クララの繊細さも、美しさも、嫋やかさもありません。クララの作品3とローベルトの作品99の主題同志が混じりあうこの曲の最大の聞きどころも無残な物で、深みがないだけではなく、左手と右手のタイミングが揃っていない!
この遅いテンポの部分を極めて遅く、速いテンポの部分をこれ以上は無いだろうと言うぐらい速く弾くというバランスは何処かで聴いたことが有る! そう、リストのピアノ曲の演奏に多く見られる物です。
ここまで聴いて、Barbara Moserの経歴を読みました。案の定、1990年の国際フランツ・リストピアノコンクールで第一位になったピアニストだそうです。ちなみに生まれはオーストリーのウィーンだそうです。
続くローベルトのピアノソナタ第二番。もう何も語りたく有りません。ローベルトの緻密なリズムとテンポの変化はそこになく、自分のあらん限りの指先のテクニックで、テンポの速い楽章は誰よりも速く弾く事に生きがいを感じているような演奏です。そこにある音楽は決してローベルト・シューマンではありません。
話が戻りますが、クララの作品20の演奏時間は9分1秒でした。他の人の演奏が10〜12分かけているのに、たったの9分です。しかもテンポの遅い変奏を遅く弾いての結果です。演奏時間もこのおぞましい演奏を物語っています。
このピアニストには、クララが生徒にいつも語っていた言葉を捧げたいと思います。
「シューマンは意味のない符号、休符、あるいは付点を書いた事はありません・・・・
書いてある通りに弾いて下さい。優れた洞察力を持つ人にとって、全ては楽譜に書いてあります。」
もうひとつ、クララの娘の、オイゲニーの言葉も..
ママは一つ一つの作品をとても雄大に、情熱的に、そして論理的に紡ぎあげてゆきます。急ぐことも無いし、突然の絶頂もありません。厳格な芸術の法則に従いながら、それでいてとても自然で自由なのです。
間違っても、こんなCDを買ってはいけません。
このCDは2001年9月現在、アメリカのCDショップのカタログには掲載されていません。但し、秋葉原の石丸電気にはまだ在庫が有るようです。
Modified in September 2001
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