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The Songs of Robert Schumann
6
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Geraldine McGreevy (S), Stella Doufexis (Alto/MS),
Adrian Thompson (T), Stephan Loges (B), Graham Johnson (Pf), Stephen Hough
(Pf)
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レーベル;Hyperion(英国) |
入手性;輸入現行盤 |
CD番号;CDJ33106 |
お気に入り度;★★★★ |
録音年月日;2000年6月3日-2001年8月24日 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;75分29秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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ローベルト・シューマン;スペイン歌曲集・作品74
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ローベルト・シューマン;5つの歌・作品40
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クララ・シューマン;ヘルマン・ロレットの「ユクンデ」からの6つの歌・作品23
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ローベルト・シューマン;スペインの恋の歌・作品138
コメント
ハイペリオンが進めている「シューマン・歌曲全集」の第6巻です。このシリーズは2003年5月現在で第7巻まで発売されています。シューマンの歌曲全集といえば、ドイツグラモフォンが残したフィッシャーディスカウとエッシェンバッハによる物が有名ですが、これは全集でもなんでもなくて、シューマンの有名歌曲集のしかも抜粋版です。それに対してハイペリオンの進めている全集プログラムは、独唱曲だけではなく合唱曲も含めての全集であり、しかもしかもその中に「クララの歌曲も散りばめる!」という、真の意味での「シューマン夫妻の歌曲全集」を目指しているようです。事実、このCDにはクララの作品23が丸ごと収められていますが、第4巻には作品12(ローベルトの作品37に包含される形)と「別れのつらさよ」「おやすみ」が、第5巻には「彼らは愛し合っていた」(作品13-2)
、「民衆歌」 、「彼女の肖像」(作品13-1「私は暗い夢の中で立っていた」の初期バージョン)、「ローレライ」が収録されています。
このCDは、冒頭(ローベルトの作品74)と末尾(ローベルトの作品138)の合唱曲で、二つの独唱曲(ローベルトの作品40とクララの作品23)を挟む構成としています。しかも独唱曲は男声(OP.40)→女性(OP.23)という凝りよう。全集の中の一枚でありながら、独立したCDコンサートとしてきめ細かい配慮がされています。
歌唱は全てに「真摯」という言葉が当てはまると思います。私個人は実はアンチ有名演奏家派で、1000枚近いCDコレクションの大半がマイナーレーベルのマイナーな演奏家の物で占められています。その理由は、大手レーベルが抱える有名演奏家の演奏はコマーシャリズム丸だしの物が多く、演奏の目的が作曲家の意図を伝えることではなくて、演奏家の存在と個性を誇示するものに感じるからです。演奏家の演奏ではなく、作曲家の意図した音楽を聴きたい私には、殆ど全ての著名演奏家(ピアニスト/ヴァイオリニスト/歌手)のCDは一度聴いたらごみ箱に捨てたくなるものばかりなのです。
その私にとって、このCDはとても心地よい演奏の一枚になっています。一人一人の歌唱陣は決して有名ではありませんが、それだけにローベルトとクララに対して自分の歌唱力を捧げているという雰囲気が伝わってきます。オイゲニー・シューマンがクララの演奏を語った言葉を借りれば「急ぐことも無いし、突然の絶頂もありません」。しかし一つ一つのフレーズはスコアの指示に従って注意深く歌われている様に感じます。
クララの作品23は、ソプラノのGeraldine McGreevyが受け持ちます。その手前に置かれたバリトンのStephan
Logesの歌うローベルトの作品40から続けて聴けば、突然明るく爽やかな春風が吹いてきたような雰囲気を醸し出します。冷徹に聴けばMcGreevy嬢よりも艶っぽい演奏をする歌手はいますが、曲の配置がなせる効果で、ローベルトの歌曲が持つ力強さと構成力の中に、優しい新風を吹き込む役割を十分に果しています。以前にも何処かで書いた気がするのですが、ローベルトの曲を聴き続ける際に、間にクララの曲を散りばめると、一聴では作風の統一性を維持しながら優しい変化が生まれて飽きることなく聴き続けられる効果があると思っています。このCDはその良い例だと思います。
ハイペリオンは既にクララの歌曲全集を発売しています。その歌唱陣もローベルトの全集に参加していますが、しかしこのCDに収められたクララの作品23は全集からの引用ではなく、異なる独唱陣で新たに録音されています。このあたり、手を抜かないハイペリオン、商業主義丸だしの大手レーベルでは考えにくいだけに、今後の全集にも期待がかかります。
このCDは大手の輸入盤CDショップならば店頭購入可能だと思います。
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