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Clara Schumann
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Marie-Josephe Jude (Pf)
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レーベル;Lyrinx |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;LYR 2255 |
お気に入り度;★★★★★ |
録音年月日;2006年11月13-16日 録音;DSD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;64分52秒 |
音質 ;★★★★★ |
収録曲
- 音楽夜会・作品6
- 三つのロマンス・作品11
- ロマンス・イ短調
- 三つのロマンス・作品21
- 四つの束の間の小品・作品15
コメント
クララ100%のピアノ曲のCDです。
ピアニストのMarie-Josephe Judeは恐らくフランス人。1968年生まれで、パリ国立高等音楽院で大学院まで進み、1989年にクララ・ハスキル・ピアノコンクールのファイナリストに残ったそうです。その後はソロ活動に入り、このCDのレーベルであるLyrinxにメンデルスゾーンやブラームスを中心にいくつかの録音を残しています。
フランス人演奏家と言えば楽譜を無視した演奏を個性や美徳と勘違いしている人もおり、Pierre-Alain Volondat盤や、まだ掲載していないCDで落胆させられた経験が数多くあります。しかしこのMarie-Josephe Jude盤は良い意味で私の期待を完全に裏切ってくれました。最初のプレイバックの時から最後まで心地よく聴き通せました。誠実で柔らかく、美しい演奏です。
音楽夜会・作品6は緩急の変化に富んだ曲集ですが、Judeは全体的に柔らかな表情の中で適度な変化感を表現しています。第1曲トッカティーナの冒頭と最後は元気よく演奏する一方で中間部は極めてゆっくりと演奏し、コントラストを高めています。第2曲ノットゥルノはゆったりとした音楽ですが、速度を落としすぎず、高音域は華やかに、若々しい輝きをもったノクターン。第3曲マズルカは逆に速度を上げすぎず、細部にまで丁寧な表情を与えてとても心地よい音楽になっています。第4曲バラードはとてもゆったりとしたテンポで演奏されて、細部のニュアンスも絶妙です。第5曲マズルカも速すぎず、しかし元気さも失わず。第6曲ポロネーズ、テンポは標準的ですが打鍵はソフトなので、ポーランドの舞曲というよりもクララの音楽に仕立てています。
三つのロマンス・作品11も素敵な演奏ですが、演奏が上出来だとCristina Ortizの演奏と比較してみたくなります。Ortizの恐ろしいほどに深い哀愁を湛えた演奏に比べると全体的にテンポが速く(Ortizが遅いのですが)、細部のニュアンスが軽く、若いJudeらしい、楽観的な、希望の光の見えている哀愁に満ちたロマンスと言えそうです。とは言え、Ortizと比べなければ雰囲気に富んでおり、急ぎ過ぎることもなく、柔らかいタッチでとても丁寧に演奏しています。
ロマンス・イ短調はテンポはゆったりと取って、細部表現も丁寧で、哀愁に満ちた曲を意図通りに弾いています。
続く三つのロマンス・作品21も同様の演奏で、第1曲はとりわけテンポを遅めに設定して、細部に拘った演奏になています。第2曲は本来快活な音楽ですが、ゆっくり演奏して別のニュアンスを漂わせています。これは第1曲と第3曲のつながりを考えたものと思われます。第3曲はテンポの速い曲でその通りに演奏されますが、ピアノタッチはあくまで柔らかく保たれています。
四つの束の間の小品・作品15も上出来の演奏ですが、そうなるとついKonstanze Eickhorstの演奏と比較してみたくなりました。第1曲はEickhorstの方がかなり速く演奏されますが、不思議と細部のニュアンスが極めて豊かで色彩感があり、名演になっています。Judeの方はゆったりとしたテンポで丁寧に演奏されます。高音域での華やかな打鍵もあって変化に満ちていますが、Eickhorstの後に聴いてしまうとやや平板、あっさり目に聞こえるのは致し方ない所でしょうか。第2曲はテンポが速めの明るい曲ですが、Judeの演奏の方がテンポが遅く嫋やかさを備えた良い演奏になっています。対するEickhorstは速めのテンポで独特の色彩感を表現しています。第3曲は私が最も好きな曲のひとつですが、どちらもニュアンスを込めて演奏されています。Eickhorstの方が一段上手に感じるのは、音符や休符の一つ一つのニュアンスの付け方、変化のさせ方が多彩で、この曲の柔らかく優しい表情を見事に表現しているところ。しかしJudeの演奏も丁寧で柔らかく、これだけを聴いていればほぼ最上級と思えるものです。第4曲でJudeは柔らかいピアノタッチで快活な音楽を紡いで行きます。対するEickhorstは極めて速いテンポでもっとコミカルに表現しています。
スーパーオーディオCDですが、通常のCDで聴いても録音は極めてクリアで、分解能も高く、帯域バランスも自然で上質です。録音データーの無いことの方が多いフランス製のCDで、録音年月日、使用機材、エンジニアの名前までジャケットに印刷されているので、音質に対する自信のあらわれなのでしょう。
このCDを私は日本のHMVから購入しました。2009年8月現在、アマゾンではドイツとフランスでしか扱っていません。
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