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DIE ROMANTISCHE VIOLINE
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Sergiu Luca (Vn), Brian Connelly (Fortepiano)
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レーベル;ACANTHUS |
入手性;海外現行盤 |
CD番号;20 003 |
お気に入り度;★★★★★ |
録音年月日;2004年5月17-20日 録音;DDD |
資料的貴重度;★★★ |
収録時間;67分04秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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フェリックス・メンデルスゾーン :ヴァイオリンとピアノの為のソナタ・ヘ長調(1838)
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ローベルト・シューマン:ヴァイオリンとピアノの為の3つのロマンス・作品94
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クララ・シューマン:ヴァイオリンとピアノの為の3つのロマンス・作品22
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シューマン/ブラームス/ディートリッヒ :FAEソナタ
コメント
サブタイトルにKHM-CDシリーズと名付けられたこのCDは、ウィーンにある美術史博物館とACANTHUS
RECORDのコラボレーションによる企画で、同博物館の古楽器コレクションの楽器を用いて演奏された音楽を収録しています。このCDに用いられているヴァイオリンは、19世紀前半にウィーンのニコラウス・サヴィッキが制作したもの、またフォルテピアノ/ハンマーフリューゲルは1840年にウィーンのヨハン・バプティスト・シュトライヒャーによって制作されたものです。どちらもクララとローベルトの愛が最高潮にあった時代の楽器ですね。
このCDの最大の特徴は類まれなヴァイオリンの美音にあります。メンデルスゾーンのソナタが流れたその瞬間から、艶やかなヴァイオリンの音色に引き込まれてしまいます。古楽器コレクションの一つとはいえヴァイオリンの場合は19世紀は現代そのもので、頻繁に耳にするストラディヴァリウスよりも100年ほど新しい時代のものなので、音質も現代バイオリンそのものです。音の余韻はストラディヴァリウス程ではなく、減衰時間が早い印象なのですが、音が鳴っている時の音色はとても愛らしくチャーミングです。このヴァイオリンの音色を活かす為でしょう、バイオリニストはあまりビブラートを効かせる事無く演奏していますが、それでも十二分にニュアンスと愛らしさに富んだ音楽を聴かせてくれています。
ヴァイオリンに寄り添うピアノの方は逆に現代ピアノとは異なる音色のフォルテピアノなので、音がまろやかで、速いパッセージが余り似合わない音色になっています。このふたつの楽器が紡ぐ音楽は、柔らかさと愛らしさ、そして一音一音を確実に聴かせるような誠実さに溢れたものになっています。あまり録音頻度の多くないメンデルスゾーンの1838年のソナタ、ヴァイオリンで演奏するローベルトのロマンス・作品94は手持の他の録音よりも魅力的に聞こえました。そして何よりFAEソナタの演奏には独特の存在感があると思いました。1853年10月にデュッセルドルフを訪問した天才ヴァイオリニストのヨアヒムに贈る為に三人共作で作られたこの曲は、どちらかと言えば技巧に富む曲だと思うのですが、この曲を音楽性豊かにかつ誠実に演奏して行きます。私はFAEソナタ全曲の録音を5種類持っていますが、この録音が一番楽しめました。
さて肝心要のクララのヴァイオリンとピアノの為の3つのロマンス・作品22ですが、誠実さとチャーミングさを合わせ持った演奏で、聴き惚れてしまいました。この解説を書くにあたって、この曲のリファレンスとなっているゲリウストリオの演奏と比べてみましたが、どちらにも存在感がありますね。ゲリウストリオが用いているヴァイオリンは天下のアントニオ・ストラディバリの手による1711年製ストラディバリウスで、その音色はやはり孤高の美しさを持っています。ヴァイオリンの豊かな余韻/響きにビブラートを効かせて、この上も無く愛らしくデリケートに演奏しています。一方の1800年代前半のニコラウス・サヴィッキのヴァイオリンは、前述のように響きはストラディバリほど豊かでは無いですし、ヴァイオリニストはビブラートを抑え目にして演奏していますが、しかし楽器の音色そのものがチャーミングなので、余韻やビブラートが少なくても十分に楽しめますし、それがまた音楽の誠実さ、落ち着きにつながっていると思います。ストラディバリウスの音とは方向性が違うので、この音を駄音と評する人がいても不思議はありません。しかし私の耳には数多くあるヴァイオリンのCDの中でも、ゲリウストリオのヴァイオリンと並んで屈指の音の美しさを持つ演奏であると思えました。
ヴァイオリニストのセルジウ・ルカはルーマニア生まれで、現在はアメリカを拠点として活動しています。ブライアン・コネリーはアメリカ生まれで、現代音楽と古楽の両方をレパートリーにもつピアニスト。ヒューストンのシェファード音楽院で教鞭ととっています。
このCDに一つ問題があるとすれば、入手性でしょうか。私はCDショップ・カデンツァに発注してから入手まで一年以上かかりました。amazonでも日本やアメリカのサイトには掲載されておらず、ドイツのamazon.deでのみ発注可能です(2006年3月現在)。基本はウィーンの美術史博物館で販売されているCDです。
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