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CLARA SCHUMANN
Piano Concerto, Piano Trio
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Francesco Nicolosi (Pf), Rodolfo Bonucci
(Vn), Andrea Noferini (Vc), Alma Mahler Sinfonietta, Stefanica Rinaldi
(Cond)
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レーベル;NAXOS(香港) |
入手性;輸入現行盤 |
CD番号;8.557552 |
お気に入り度;★★★ |
録音年月日;2004年5月25-26日、9月28日 録音;DDD |
資料的貴重度;★ |
収録時間;53分54秒 |
音質 ;★★★★ |
収録曲
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ピアノ協奏曲・作品7
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ピアノ三重奏曲・作品17
コメント
2005年6月に発売された、久々のクララ100%のCDです。
まずピアノ協奏曲・作品7ですが、若きクララが初めて作曲したオーケストラ作品であるこの曲は、客観的に申し上げて魅力的な演奏が難しい作品で、普通に弾いてしまうとオーケストラのハーモニーが濁り、ピアノとの掛け合いもあまり効果的では無く聞こえてしまいます。それだけに演奏解釈には知恵と工夫が必要です。この曲を最初に魅力的に響かせたのは杉谷昭子さんとオスカンプ/ベルリン響の演奏で、表面的なテクニックではなく情熱と愛を持ってオーケストラとピアノが語り合った初めての演奏です。その後に出たアンジェラ・チェン盤とエレーナ・マルゴリーナ盤はオーケストラパートの緻密なコントロールで(瞬間瞬間に響かせる楽器、押さえる楽器をコントロールして)、濁りを抑えて魅力的に響かせています。
経験則で、この曲の演奏は後から出てくる方が、先人の苦労や失敗を取り込んで更なる工夫が出来るので、演奏の方も魅力的になる事が多いです。このCDは2005年時点で最新の演奏になりますが、予想通りなかなかに魅力的な演奏を聴かせてくれます。ただ「これぞ最上級の演奏だ!」とは言えないですけどね。
演奏は一言で言えば誠実で、比較的ゆったり目のテンポで音符をとても大切にしているような印象を受けます。ピアノとオーケストラのバランスで言えばピアノが主導的な存在感を持ち、オーケストラはとても控えめです。オーケストラだけを聴いているとアンジェラ・チェン盤の様な響かせ方の工夫はあまりされていない様ですが、オーケストラそのものの存在感を少し後退させた結果、オーケストラが濁ったとしてもそれが前面に出ず、ピアノを邪魔しません。第二楽章のチェロとの掛け合いも、チェロが控えめで色気も薄めで、「クララのピアノ協奏曲はあくまでピアノ主導の音楽なのだ」という思想を貫いている印象です。全体としてはアンジェラ・チェン盤とは違う意味で魅力的に響かせる工夫をしている演奏に感じました。私がこの演奏を延べ15回ぐらい聞き通してしまったと言えば、水準以上の演奏レベルの高さを分って頂けると思います。
ピアノトリオ・作品17の方はクララの円熟期の作品なので、作曲当時から名曲としての誉れ高く、どのトリオが演奏しても破綻する事は滅多にありません。このトリオによる演奏も素晴らしいものになっています。この曲の私のリファレンスになっているゲリウストリオ盤と比較すると、情熱と妖艶さを持ってぐいぐい推進するゲリウストリオに対して、このCDの演奏はあくまで誠実です。テンポは比較的ゆったりしていて一つ一つの音符を大切にしながら、ピアノとバイオリンとチェロの「静かな」会話が展開されてゆきます。ピアノ協奏曲と同様に三者の中ではピアノが主動的な地位を占めて、バイオリンとチェロはピアノに寄り添う感じの演奏なので、一般的なピアノトリオの三者三つ巴的な演奏を期待すると裏切られるかもしれません。しかしこのCDの演奏もとても良いものです。
第三楽章のアンダンテのこのCDの演奏は、数あるこの曲のCDの中でも個性的なものになっています。テンポが極めてゆったりとしていて、まるで違う曲のような響きを持っているからです。演奏時間は6分33秒で、アンダンテらしくゆったりと、しかし妖艶に歌い上げるゲリウストリオの5分19秒よりも1分14秒も長くなっています。
ふたつの作品の演奏に共通して言える事は、誠実でゆったり、感情移入は控えめという事です。最上級の演奏とは言えないかも知れませんが、多くの人がクララを水準以上で解釈出来るCDだと思います。他のCDの入手性が難しくなっている2005年現在では、入手容易なナクソスのCDから、このCDと岩井美子さんのピアノ曲のCDを購入されてクララの世界に足を踏み入れられるのも良いと思います。
今回の奏者は全員イタリア人のようです。解説書には演奏者の記述が通り一遍のもの(出身大学、師事した先生、入賞コンクールなど)しかないので演奏者について余り語れません。ただ指揮者とオーケストラには触れておきましょう。指揮者のStefania
Rinaldiは2002年にナポリで活動を開始した新進気鋭のイタリア人の女性指揮者で、現在はイタリアのアベリノにある音楽大学の教授をしています。Alma
Mahler SinfoniettaはStefanica Rinaldiに率いられた女性のみの奏者によるオーケストラで、2003年に創立され、主に女性作曲家の作品を広める為の演奏活動をしているそうです。
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